2024年となり日本の株式市場は盛り上がっているそうです。実際、2024年1月19日の終値は3万5963円と高水準でした。これはバブル経済以来の高い水準です。
背景には今年1月にスタートした新NISA(少額投資非課税制度)の効果、最近の円安、半導体市場の回復見込み、中国投資から引き上げた資金の流入など様々な要因があると思います。
それでも私は日本の株式市場に積極的に投資する気になれません。その理由を説明したいと思います。
それは米国から日経平均が見えるのかを私なりに考えた結果です。そのためにドル円の為替レート、米国のインフレも反映させた日経平均の変動を試算してみました。
その結果は、とても浮かれた気分にはなれない残念なものでした。
日経平均の推移
まずは日経平均の推移を見てみましょう。
日経平均は2012年頃から右肩上がり
日経平均はバブル経済の崩壊によって1991年頃に急落、以後は長期にわたって低迷していました。
2000年~2012年頃を底に順調に回復しているように見えます。ここ10年はコロナショックなどはあったものの順調に右肩上がりのグラフとなっています。
こうした株価の回復の背景には、日本の経済政策の影響もかなりあると考えています。具体的にはゼロ金利政策と量的緩和です。
こうした政策により市場に流通するマネーが増えれば、株価が上がります。
理屈を簡単に言うとこんな感じです
株式の発行数が変わらずに流通する日本円が増える
↓
株式に対して日本円の価値が相対的に下がる
↓
株式の価格が見た目では上昇する
ドル建て日経平均も考える
ところで、日本の株式市場の好調さに疑問を持つ人々の中には、「ドル建て日経平均」も意識しようという方もいます。
日経平均の単位は日本円ですが、日経平均を米ドル換算でも見てみようという訳です。
海外での経済活動では米ドルで決済されることが多いです。ですから米ドル基準での価格変動を意識することはとても重要です。
「海外からみて日本の株価がどう見えているのか」という観点で貴重な情報を与えてくれるからです。
ドル円の推移
ではまずドル円の為替レートを確認してみましょう。
2012年以降は円安が進行している
2011年には1ドル=80円前後だったドル円レート2024年1月には1ドル150円近い水準となっています。
つまり円安ドル高です。
ということは、日経平均の上昇は円安で相殺されているかもしれません。
ドル建て日経平均の推移
ではドル建て日経平均も確認しましょう。
ドル建て日経平均も上昇傾向!
ドル円為替レートについて、1988年以降の年末終値をグラフ化しました。
2012年頃からドル建ての日経平均も基本的に右肩上がりなのが分かります。
ドル建て日経平均のほうが早くバブル期水準を達成
念のため円建て日経平均とドル建て日経平均を重ねてみましょう。
むしろドル建日経平均の方が早く回復していることが分かります。
ドル建て日経平均も上昇基調なら、それは喜ばしいことです。
めでたしめでたし・・・とはいきません。
ちょっと待った!ドルの価値だって下落している!
日経平均は本当にに絶好調なのでしょうか?
私にはそう思えません。
なぜなら、米国は長年インフレーション(物価上昇)が続いていからのです。
物価が上昇するということは、言い換えると米ドルの価値が下落しているということなのです。
ドル建てで株価が上昇していても、株価の上昇以上にドルの価値が下がっているかもしれません!
消費者物価指数からみた米ドルの下落
それでは米国の物価の推移を見てみましょう。
米国の消費者物価指数の推移
下のグラフは「世界経済のネタ帳」というサイトから頂いたものです。1980年から2023年までの米国の消費者物価指数は以下のようになっています。
このグラフはずっと右肩上がりです。米国ではインフレが続いていることが分かります。つまり物価が上昇している訳です。
(繰り返しになりますが)言い換えれば、米ドル自体の価値が「モノ」や「サービス」に対して下落し続けています。
米ドルの価値は1980年の1/3以下
先ほどのグラフでは1980年と比較すると2023年には物価は3倍以上となっています。
つまり1980年から2023年までの間に米ドルの価値は3分の1に低下している訳です。
わたしの作成した他のグラフに合わせて1988年と2023年でも比較してみましょう。その場合でも、物価は約2.57倍に上昇しています。
つまり「モノ」「サービス」に対してドルの価値は5分の2以下にまで低下しています。
それでは、米国の物価上昇(インフレーション)も考慮した日経平均の推移はどうなっているのでしょうか?
米国物価を考慮した株価の推移
日経平均から物価上昇(米国)の影響を取り除くため、消費者物価指数で割ってみましょう。
日経平均はバブル期に遠く及ばず
下のグラフは「ドル建て日経平均」を「米国の消費者物価指数」で割った数値をグラフ化したものです。
米国のインフレを考慮した場合でも日経平均は2012年以降じわじわと回復傾向にあることは分かります。2024/1/19には、最低値であった2002年のおよそ2倍になっています。
しかし、円建て日経平均やドル建て日経平均とは異なり、バブル期には遠く及ばない水準であることが分かります。
つまり、「米国目線では日経平均のパフォーマンスは大して良くない」と言えるのではないでしょうか。
比較のために米国の株価指数も見てみましょう。
NYダウは圧倒的な高パフォーマンス
おなじように「NYダウ」を「米消費者物価指数」で割ってみました。
NYダウは物価上昇分を差し引いても1988年から6倍以上に成長していることが分かります。2002年からでも約2.6倍に成長しています。
2002年末~2024年1月19日の期間で日米を比較すると、NYダウが約2.6倍、日経平均が約2倍です。日本株も健闘しています。それでも、少なくとも「米国目線では日経平均のパフォーマンスはそれほど良くない」と言えるでしょう。
こうした数値を見ると、「バブル期以来の高値」などと浮かれる気持ちには私は到底なれません。
これを日本株に伸びしろがあると解釈することもできますが、日本企業の「生産性の低さ」や「革新性の不足」を反映している様に私は感じてしまいます。
この記事は、あくまでの私の個人的な方針や考えを紹介したものです。
この記事は、読者様に特定の投資行動を推奨するものではありません。
投資はあくまでも自己責任でお願いします。
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