以前わたしが大いに悩んだのは足の悪臭です。それはそれは強烈なニオイで、周りに迷惑になっていないか気になって仕方がありませんでした。そんなわたしですが、たった4つの対策で足の臭いとサヨナラできました。
その4つの対策とは、靴のローテーション、通気性の良い靴を選ぶ、ソックス二重履き、毎日足洗い、です。この記事では、足を洗う方法や注意点、洗剤の種類などについてご紹介します。
<当ページはアフィリエイト広告を利用しています>
概要
足の悪臭の原因は、皮膚常在菌と呼ばれる細菌たちが産生する「イソ吉草酸」です。足を洗うことで、皮膚常在菌を減らしましょう。皮膚常在菌のエサとなる汗・皮脂・角質を洗い流すことができます。また、足をあらえば皮膚常在菌そのものを洗い流すことができます。
足を洗うのは、基本的には手洗いで十分です。足をふやかし、丁寧に足を洗い、しっかり乾燥させましょう。普通の石鹸やボディーソープでも効果は十分期待できます。どうしても効果が不十分な場合には足用洗剤や逆用石鹸の使用を検討することになります。
しかし洗剤にこだわるより、他の悪臭対策を併用するほうが大切です。具体的には、靴のローテーション、靴下を二重に履く、通気性の良い靴を履く、などの対策を組み合わせましょう。
皮膚常在菌も、そのエサとなる角質も、皮膚の機能を保つために必要なものです。過度の殺菌・消毒や、過度の角質除去は、皮膚へのダメージになります。注意してください。
皮膚の状態に異常を感じたら、必ず皮膚科を受診しましょう。
足を洗うことがニオイ解消につながる理由
足を洗うと、どうして足の臭いを解消できるのでしょうか。その理由を次の4つのステップで説明します。
- 皮膚常在菌の産生する「イソ吉草酸」がクサイ
- 皮膚常在菌のエサは汗・皮脂・角質
- 洗って皮膚常在菌のエサを除去
- 洗って皮膚常在菌そのものを除去
足の臭いの原因は皮膚常在菌
足の悪臭の根本原因は、ズバリ皮膚常在菌と呼ばれる細菌たちです。皮膚常在菌が活動すると「イソ吉草酸」などの脂肪酸ができます。この「イソ吉草酸」が独特の汗臭いニオイの原因となります。
ですから、皮膚常在菌の活動や増殖を抑えることが重要なのです。
そのためには2つのアプローチがあります。
- 皮膚常在菌のエサを取り除く
- 皮膚常在菌を除去または殺菌する
では、皮膚常在菌のエサとは何でしょうか?
皮膚常在菌のエサは汗・皮脂・角質
皮膚常在菌と呼ばれる細菌たちのエサとはズバリ汗、皮脂、角質です。ですから余分な汗、皮脂、角質を取り除くことが大切です。
エサがばなければ、皮膚常在菌が増殖できません。皮膚常在菌が少なければ「イソ吉草酸」も少なくなります。
では、どうやって汗・皮脂・角質を取り除けば良いのでしょうか?答えは「足をあらう」です。
洗って皮膚常在菌のエサを除去
足をあらえば、汗・皮脂・角質を皮膚常在菌から取り上げましょう。石鹸であらうことで、皮脂や余分な角質を洗い流す効率がアップします。
これによって皮膚常在菌の活動や増殖を抑えられます。
しかし足をあらう理由はそれだけではありません。
洗うことで細菌を除去
足を洗えば足に付着した微生物(細菌・カビ・ウィルスなど)を除去できます。手洗いと同じです。そして、石鹸を使用することで効率よく微生物を除去することができます。
では、石鹸と流水でどれくらい微生物を除去できるのでしょうか?手洗いの例で見てみましょう。
石鹸と流水で洗う場合、細菌などの微生物の数をたった30秒間で1/60~1/600にまで減少させることができます(厚生労働省 東北厚生局のパンフレットより)。
まとめ
このように、足を洗うことには2つの効果があります。
- エサを減らして皮膚常在菌の増殖を抑える
- 皮膚常在菌そのものを除去する
こうして皮膚常在菌が減れば、悪臭のもととなる「イソ吉草酸」を減らすことができる訳です。
では、足の洗い方を確認しましょう。
足の洗い方
わたしは足を洗うときに特別な道具は使いません。基本的に手洗いで十分効果を得ています。では基本的な洗い方を確認しましょう。足を洗う手順には6つのステップがあります。
- ふやかす
- 足全体を洗う
- 指の間を洗う
- 指を洗う
- 爪と皮膚の間を洗う
- しっかり乾燥させる
順番に見ていきましょう。
10分程度ふやかす
まず最初の段階として、10分程度は足を温水につけてふやかしましょう。これによって余分な角質を除去しやすくなります。
足全体を洗う
次に、石鹸を用いて足全体をまんべんなく洗いましょう。とくにブラシやヤスリなどは必要ありません、手洗いで十分です。
指の間を洗う
さらに、足指の間を洗いましょう。足指の間は、汗・皮脂・角質がたまり易い場所です。手指でこするなどして洗いましょう。
指を洗う
次に一本ずつ足指を洗います。わたしは足指の足裏側、足指の付け根をしっかり洗う意識を持つようにしています。
また一本一本の指を六角柱か八角柱のイメージで洗うと、洗いムラが減ります。
爪と皮膚の間を洗う
最後に爪の周辺を洗います。とくに爪と皮膚の間は垢がたまり易いです。どうしても爪ブラシなどを使う場合は、力を入れすぎて皮膚を傷つけないように注意しましょう。
しっかり乾燥させる
湿った環境は細菌が大好きな環境です。足が濡れたままでは生き残った細菌が元気を取り戻します。最後には、足をしっかり乾燥させましょう。
そのため、足指の間の水分をしっかりタオルでふき取るように意識しましょう。
洗剤の選択
ここまで足のあらい方を確認しましたが、洗剤についても、少し解説しましょう。普通の石鹸で効果はあるのでしょうか? 足専用洗剤などもありますが、どういう成分が入っているのでしょうか?これらの疑問について、わたしの経験や知識を踏まえて解説します。
個人的には普通の石鹸で十分
まず結論から言うと、わたし個人の経験では、洗剤は普通の石鹸やボディーソープで十分です。もちろん個人差はあると思います。
わたしの経験の範囲では、逆性石鹸や消毒用アルコールを用いて殺菌したところで、他の対策が不十分だと悪臭はなくなりませんでした。
ですから大切なのは、毎日かかさずしっかりと足を洗うこと、他のニオイ対策も併用することだと思います。
それでも効果が不十分なら、足用洗剤や逆性石鹸を考えても良いかもしれません。
足用洗剤の成分と効果
足用の洗剤について、わたしが調べたところ、主な有効成分はイソプロピルメチルフェノール、サリチル酸、グリチルリチン酸ジカリウムなどです。
イソプロピルメチルフェノールはマイルドな殺菌成分
イソプロピルメチルフェノールは、各種の細菌、酵母、カビ類等にマイルドに作用する殺菌成分です。 低刺激、非感作性のため有害作用の心配は少ないですが、殺菌効果も弱いと言えます。
グリチルリチン酸ジカリウムで炎症を抑え・刺激を緩和
グリチルリチン酸ジカリウムは、肌荒れを防ぐために使用されています。つまりグリチルリチン酸ジカリウムには殺菌効果や洗浄効果・消臭効果はありません。
グリチルリチン酸ジカリウムには、抗炎症作用 抗アレルギー作用があります。また皮膚刺激緩和作用も報告されています(斎藤 幸雄ら、1983)。そのため、洗剤成分による皮膚への刺激を減らし、皮膚の炎症を抑えるために使用されるのです。
サリチル酸は角質を剥離させる
サリチル酸の主な働きは、角質を軟化させ、除去しやすくすることです。角質を洗い流し、細菌のエサを減らす効果あります。
サリチル酸は塗り薬の場合には「水虫」に有効です。「水虫」は白癬菌が角質で増殖する病気です。サリチル酸は、角質ごと白癬菌を除去することで抗菌作用を示すわけです。
ただし、洗剤成分としてのサリチル酸に抗菌効果を期待してはいけません。洗剤と外用薬では、サリチル酸の「濃度」も「作用させる時間」も全く異なるからです。
じつはサリチル酸には、かつて防腐剤として使われた歴史があります。ですから抗菌作用が全く無い訳ではありません。とはいえサリチル酸の抗菌作用については過度な期待は禁物です。
劇的な効果は期待しないのが無難
足用洗剤には、それなりの有効成分が入っています。通常の石鹸やボディーソープにくらべて、殺菌効果や角質を除去する効果が高まる可能性はあります。
しかし、わたしの場合は通常の石鹸やボディーソープでも十分な効果が確認できました。ですから足用洗剤にするメリットは特に感じませんでした。
足用洗剤の使用を検討するとすれば、様々な他の対策を講じてもどうしても悪臭が解消しないときになるでしょう。
逆性石鹸
一応わたしは医師なので、殺菌成分と言えば逆性石鹸も忘れてはいけません。成分としては、ベンザルコニウム塩化物液(あるいは塩化ベンザルコニウム)が一般的です。この成分は、医療現場では殺菌消毒剤としておなじみです。
石鹸と逆性石鹸の違い
逆性石鹸とは何でしょうか?普通の石鹸との違いを説明します。
石鹸と逆性石鹸の最大の違いは電気的な性質です。石鹸は水に溶けると陰イオンになります。逆性石鹸は水に溶けると陽イオンになります。
石鹸は陰イオンになるので、油汚れなどプラスの電荷を帯びたものとよく結合します。そのため高い洗浄力を持ちます。
逆性石鹸は陽イオンになります。一方、細菌などの微生物の表面にあるタンパク質などの生体高分子の多くはマイナスの電気を帯びています。ですから逆性石鹸は、細菌などの表面に結合し、そこを変性させて殺菌・消毒効果を発揮します。
逆性石鹸使用上の注意
逆性石鹸を使用する場合の注意事項を解説します。
逆性石鹸は希釈して使用する
逆性石鹸は、希釈する前提で高濃度の状態で販売されています。そのまま高濃度では人体に有害です。かならず指定された濃度に希釈して使用しましょう。
作り置きしない
逆性石鹸は、使用直前に希釈・調整する必要があります。決して作り置きをしてはいけません。時間がたつと徐々に効果が弱くなります。
石鹸を必ず併用する
逆性石鹸には十分な洗浄力がありません。かならず普通の石鹼で皮脂や角質を洗い流しましょう。そのうえで逆性石鹸を使用してください。
石鹸と逆性石鹸を混ぜない
石鹸と逆性石鹸を混ぜると、結合して沈殿します。それでは役に立ちません。石鹸で洗った後、完全にすすいでから逆性石鹸を使用しましょう。
逆性石鹸の使用経験
逆性石鹸は使用経験があるので、ここで報告しておきます。
逆性石鹸単独では効果不十分
逆性石鹸をつかって足を殺菌消毒しても、それだけでは足の悪臭を解消することは出来ませんでした。靴の中で生き残った細菌が、足に戻ってくるからです。かならず靴に対する細菌対策も併用しましょう。
通気性の良い靴1足+逆性石鹸でも効果不十分
通気性の良い靴1足と逆性石鹸を組み合わせても、効果は不十分でした。しばらくは良かったのですが数カ月すると悪臭が靴に染み付いてしまいました。
ですから靴のローテーションも非常に重要です。
詳しく知りたい方は、「医師が実践する足のニオイ解消法!通気性の抜群のビジネスシューズを徹底解説」もご覧ください。
4つの対策を併用すれば、普通の石鹸で十分だった
そして、靴のローテーションと、通気性の良い靴を履く、靴下を二重にする、足を毎日しっかり洗う、の4つの対策を併用すれば、悪臭はなくなりました。このとき逆性石鹸を使用しなくても効果は変わりませんでした。
わたしの場合、靴下はハーフソックスと普通の靴下を組み合わせています。
足指が長い方は爪先が開いているタイプのほうが良いです。
興味のある方は、「医師が実践する足のニオイ解消法!靴下を二重に履いて環境改善」もご覧ください。
逆性石鹸を使用するのはかなり面倒くさい
逆性石鹸を使用する場合、石鹸で足を洗ってから、さらに逆性石鹸で消毒することになります。希釈する濃度に注意も必要です。さらに希釈液の作り置きは出来ません。
正直に言うと、かなり面倒くさい作業になります。ですから逆性石鹸の使用は、おススメしにくいです。
アルコール消毒してみた
番外ですが、アルコール消毒を併用してみたこともあります。正確にはエタノール(エチルアルコール)です。容量パーセント濃度で60-90%程度のエタノールには、細胞膜など脂質膜やタンパク質を変性させる作用があり、これによって殺菌・消毒効果を示します。
エタノール消毒だけでは効果不十分
しかし逆性石鹸と同じで、エタノール消毒だけでは効果は不十分でした。靴のローテーションなど他の対策と組み合わせることが重要です。
他のニオイ対策を組み合わせても効果が不十分な場合には、エタノール消毒を追加することを検討しても良いかもしれません。
しかし、エタノールの使用は慎重に行いましょう。
肌荒れに注意
エタノールには脱脂作用があります。しかし、皮膚の保湿のためには適度な脂分が必要です。エタノール消毒を繰り返すと、脂分が不足して肌荒れがひどくなる可能性があります。異常を感じたらすぐに使用を中止して、皮膚科を受診してください。
また薬局で入手できるアルコール系消毒液にはイソプロパノールもあります。イソプロパノールは、エタノール以上に脱脂作用が強いです。イソプロパノールの毒性を考慮すると、エタノールを使用するほうが望ましいです。
足を洗う際の注意点
足を洗う際の注意点についても紹介しておきます。
継続することが大切
足の悪臭を解消するためには、毎日コツコツと対策を継続することが重要です。足を毎日洗うように心がけましょう。
角質を削りすぎない
角質は皮膚常在菌のエサとなり、悪臭の原因です。しかし角質には、肌や体を守る「バリア機能」や、肌の水分を保つ「保湿機能」があります。角質は本来必要なものですから、除去するのは「余分な角質」だけです。
必要な量の角質層は残し、角質層の下は決して気付付けないようにしましょう。
皮膚常在菌も必要
皮膚常在菌と呼ばれる細菌たちも、我々の体には必要です。例えば表皮ブドウ球菌はグリセリンや脂肪酸を産生します。
グリセリンは、皮膚のバリア機能を保つ働きがあります。脂肪酸は肌を弱酸性に保ちます。皮膚が弱酸性になると、皮膚に付着する病原性の強い細菌の増殖が抑えられます。
さらに、表皮ブドウ球菌は抗菌ペプチドを産生することで、黄色ブドウ球菌などの増殖を防ぐことも知られています。
保湿剤などでスキンケアも行う
足を洗いすぎると、皮膚本来の保湿作用が低下してしまう場合もあります。足の状態を確認してカサカサしているようであれば、保湿剤を塗布してスキンケアを行いましょう。
異常を感じたら必ず皮膚科医を受診する
皮膚のバリア機能が失われると、細菌やカビが侵入して感染症の原因となる場合があります。異常を感じたら必ず皮膚科を受診しましょう。
例えば、皮膚が通常より赤い、水ぶくれがある、ジュクジュクする、痛い、皮膚がやたら剥がれる、いつまでも白くふやけている、黒い部分が広がっている、変色している、などの症状です。
<参考文献>
斎藤 幸雄, 他(1983)「外用剤成分等の人皮膚刺激性に対するグリチルリチンの刺激抑制作用」新薬と臨牀(32)(3),494-497.
コメント