わたしは勤務医です。副収入にはスポットバイト、医療系サイトのポイント稼ぎ、株式投資があります。ドクターなら講演料や原稿料、株式やFXで収入を得ている方も多いでしょう。
あるいはフリマで不要な日用品を売った収入は課税されるのでしょうか?ブログのアフィリエイト収入は?
こうした収入が確定申告の際には、どう扱われるのか解説します。また、簡単な追加説明もしていきます。
所得の種類
確定申告の際に、まず把握する必要があるのは所得の種類です。
所得には以下の10種類があります。
所得の種類 | 説明 |
事業所得 | 商業・工業・農業・漁業・自由業など の事業から生じる所得 |
配当所得 | 株式の配当、証券投資信託の収益の分配、 出資の余剰金の分配などの所得 |
不動産所得 | 不動産、土地の上に存する権利、 船舶・航空機の貸付などから生じる所得 |
利子所得 | 公社債や預貯金の利子、 公社債投資信託の収益の分配など から生じる所得 |
給与所得 | 給料・賞与などの所得 |
退職所得 | 退職によって受ける所得 |
山林所得 | 5年を超えて所有していた山林を伐採して売ったり、 立木のまま売った所得 |
譲渡所得 | 固定資産や資産などを売った所得 |
一時所得 | クイズの賞金や満期返戻金などの所得 |
雑所得 | 年金や恩給などの公的年金等、非営業用貸金の利子、 原稿料や印税・講演料など上記9種類の所得に属さない所得 |
ドクターの主な副収入
ドクターのありがちな副収入は、おおよそ以下のようなものだと思います。
- 非常勤の医師バイト(健診、外来、当直など)
- 役員報酬(医療法人、その他)
- 非常勤講師(看護学校など)
- 講演会の座長や講師
- 原稿料、印税、放送出演料
- 不動産
- ポイ活(医療系サイト)
- 株式投資
- FX
- 暗号資産(仮想通貨)
- アフィリエイト収入など
- フリーマーケットなどでの日用品の売却
- 自家用車の買い替えで、古い車を下取りしてもらう
それぞれがどの所得に該当するのか見ていきましょう
非常勤の医師バイト
医師としてのアルバイトの収入は給与所得です。送付されてきた源泉徴収票に従って申告書を作成しましょう。
源泉徴収票の添付が不要になった
ちなみに2020年分の確定申告から源泉徴収票の添付が不要になりました。確定申告書に記載したマイナンバーで、税務署がデータを確認できるからです。
確定申告書の作成には源泉徴収票が必要です。破棄せずに保管しておきましょう。
余談:自分を派遣する会社を作れるのか?
税金のシミュレーションをしていると、給与所得が1300万円を超えたあたりから100万円年収を増やしても50万円余りしか手取りが増えなくなることがわかります。すると、、
「自分を派遣する派遣会社つくれば、法人と個人で所得を分散して節税になるんじゃね?」
などと皆さん思いますよね? 少なくとも、わたしは思いました。しかし、、、
労働者派遣法では、医師に関しては、原則として派遣をすることは禁止です。
「原則として」ということは例外があるんですよね?
福祉施設への派遣は例外です。
福祉施設?
具体的には、障害者支援施設、生活保護法に基づく救護施設・更正施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム等に設置された診療所などが例外に該当します。
じゃあ、そこに先生をバンバン派遣しましょう!
ところが、意外と求人が無いんですよねぇ。
「コンサルタント業なら良いんじゃね?」
コンサルタント業なら労働者派遣法には抵触しないです。
だからといって「外来の給料を減らして、その分をコンサルタント報酬として自分の会社に振り込んでもらう」とかはやめたほうが良いです。
コンサル業としての実態がなければ税逃れとして扱われます。
過去に脱税として挙げられた実例があるのでやめておきましょう。
「では医師紹介会社をつくれば良いんじゃね?」
そうですよ!
民間〇局とかM〇Tみたいに、医師(自分)を紹介すればいいんですよ!
流石に、自分を紹介するだけでは紹介会社とは言えないでしょう。
税務署に事業と認めてもらうには、それなりの規模や人脈がいりますね。
ダメですかぁ・・・
役員報酬
病院幹部の先生は医療法人の役員だったりします。まれには医療法人以外の役員をしている先生もいます。いずれにせよ役員報酬は給与所得です。
わたしは「戸建て派」なので詳しくないのですが、マンション管理組合が役員に役員報酬を支払っている場合もあります。
そうしたマンション管理組合の役員報酬も給与所得扱いになると思われます。該当する方は税務署に確認することをおススメします。
非常勤講師(医療系専門学校など)
看護学校とかリハビリ専門学校とかで講義をされる先生もいます。勤務医なら、教授にいわれて渋々で講義をしている人が大半だと思います。収入は給与所得で申告しましょう。
講師を派遣する人材派遣業なら、禁止されていないです。起業できなくはないです。
ただ、まじめに講師をするなら、スライドの準備などで講義時間の10-20倍は最低かかります(あくまでも私の個人的な経験です)。
講義の準備は本当に大変です。
教える立場になって、初めてわかるその苦労・・・
報酬も安いので、割に合わないとは思います。それに、大都市圏でないと十分な需要がないと思われます。
講演料、原稿料、印税、放送出演料、アフィリエイト収入、シェアリングエコノミーによる収入などは雑所得
講演料については、普通の勤務医が関わるのは、製薬会社がスポンサーになった講演会とか研究会ですね。
教授や医局幹部が座長をして、前座で(退局前の)わたしのような下々の勤務医が講演し、そのあとメインゲストの先生が講演するやつです。前座でも演者なら講演料を頂いたりします。
そのほか、製薬会社の動画コンテンツに講師として出演される方もいるかもしれません。TV番組などで解説のために出演する方もいるでしょう。
こうした講演料・出演料は、通常は雑所得として扱われます。原稿料や印税も雑所得です。
他の所得に分類できないものは全て雑所得です。
他の所得に分類できない雑多な所得はすべて雑所得
講演料・出演料・印税以外にも、アフィリエイト収入、シェアリングエコノミーによる収入など、他の所得に分類できない雑多な所得はすべて雑所得です。ただしFXは「先物取引に係る雑所得等」として別扱いです。
雑所得は給与所得など各種所得と合算されたのち課税される総合課税になります。
雑所得には、以下のような特徴があります。
- 高所得ほど高税率な累進課税。
- 損失が翌年以降に繰り越せない
- 損失が出たときに他の所得区分の所得と損益通算できない
雑所得は、事業所得などと比較して優遇措置がない所得です。しかし必要経費を計上することはできます。
多くの場合、文房具代やパソコン購入費用などは経費に計上できます。
本業または兼業レベルなら事業所得
ただし、講演や原稿執筆が本業ないし兼業と言えるレベルなら、事業所得になる可能性があります。例えば講演料や原稿料、出演料が収入の多くを占め、それで生計を立てている場合です。
事業所得と認められなければ雑所得
副業をしている勤務医が、副業で得た給料以外の収入は、事業所得と認められない限り雑所得です。
たとえばアフィリエイト収入、シェアリングエコノミーによる収入などは原則的に雑所所得です。
事業所得として扱われるには実態が必要
事業所得として扱われるには、十分な実態を伴っている必要があります。
例えば以下のような実態があることが重要です。
- 事務所を構えている
- 営業活動している
- 一定規模の設備投資をしている
- 人を雇っている
- 規模が十分大きい
- 赤字が何年も続かない
- 生活をささえる収入源になっている
- 業務に充てている時間が十分長い
これらの実態のいくつかを満たさないと事業所得としては扱われません。
本気で取り組んでいる事業でないとダメということですね?
簡単に言うと、そういうことになります。
確定申告する人は、20万円以下の雑所得も申告が必要
雑所得が20万円以下なら、確定申告が不要な場合もあります。しかしそれは勤務先が1か所だけで、年末調整を受けていている場合に限られます。
ほとんどの医師は、バイトなどの副収入の関係で確定申告が必要です。確定申告する人はたとえ雑所得が20万円以下であっても、雑所得も申告が必要です。
雑所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要なケースでも、住民税の申告は必要です。
住民税の申告は盲点ですね!
不動産収入
転勤のため、所有する分譲マンションを人に貸した。相続した土地を駐車場にしている。アパート経営をしている。などのケースですね。
もしかしたら、航空機や船舶を貸付けている先生もいるかもしれません。
こうした所得は不動産所得または事業所得になります。簡単に言うと小規模なら不動産所得、大規模なら事業所得です。
国税庁のホームページによると、事業所得として扱われる条件は、アパートやマンションでは10室以上、貸家では5棟以上です。
所得税(国税)と個人事業税(地方税)で基準が異なるケースが多々あります。必ず各自治体の基準を確認しましょう。
ポイ活(医療系ポイントサイト)
エムスリー、メドピア、ケアネット、日経メディカルなどのポイント稼ぎですね。これらは雑所得として申告することになります。
ポイントと税金の関係については、別の記事でもっと詳しく解説しています。
興味のある方は下のリンクをどうぞ。
株式投資
株式を売却したときの譲渡益は譲渡所得です。配当を受け取った場合は配当所得です。
株式投資の収入は申告分離課税
なお、株式の譲渡所得は給与所得などと損益通算できません。その代わり、申告分離課税となり税率は所得税15%、住民税5%で一定です。
ただし、平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額に2.1%を乗じた額を所得税と併せて申告・納付することになります。
税率が一定なので、株式投資から得る所得が大きいほど、累進課税の給与所得と比べて税負担が小さくなります。
税率が一定なので、所得が大きい人ほど有利な税制になっています。
証券口座の種類と確定申告
確定申告が必要かどうかは、開設している口座の種類で変わります。
証券口座の種類は、以下の4つです。
- 一般口座
- 特定口座(源泉徴収あり)
- 特定口座(源泉徴収なし)
- NISA講座
各口座の特徴や確定申告の必要となる条件の詳細は別の記事で解説予定です。
ここでは簡単に説明します。それぞれの口座での確定申告の必要性は以下の通りです。
口座の種類 | 確定申告 | 損失の繰り越し・ 他口座との損益通算 |
一般口座 | 必須 | 確定申告で申請 |
特定口座 (源泉徴収あり) | 不要な場合あり | 確定申告で申請 |
特定口座 (源泉徴収なし) | 必須 | 確定申告で申請 |
NISA口座 | 原則不要 | 不可 |
FX
FX取引の収入は「先物取引に係る雑所得等」に該当します。雑所得ですが、他の雑所得とは扱いがことなります。
FX取引の所得は申告分離課税
FX取引の収入など「先物取引に係る雑所得等」は申告分離課税になります。所得税15%(他に地方税5%)の税率で課税されます。累進課税でないことは大きなメリットになり得ます。
FXのデメリットは他の「先物取引に係る雑所得等」以外の所得の金額との損益通算ができないことです。
FXと損益通算できるのは何ですか?
「金先物」、「TOPIX先物」とかです。プラチナでもプルトニウムでも先物なら何でも良いです。
敷居が高いですね・・・
損益通算の具体例
ある年に某FX業者にてスキャルピング(超短期売買)で100万円の損失を出したとします。別のFX業者のリピート系取引では15万円の利益がでたとします。
このFX取引同士の損益通算は可能です。しかし残り約85万円の損失は他の所得と損益通算できません。その85万円分は損失をまる被りとなります。せめて、損失は確定申告して繰越控除できるように準備しましょう。
これって、先生の実例ですよね?
ははは、違いますよ!
わたしの損失はもっと大きかったです。
・・・・
暗号資産(仮想通貨)
暗号資産(仮想通貨)の取引から得た収入は雑所得になります。雑所得でもFXなどの「先物取引に係る雑所得等」とはことなり、普通の雑所得です。つまり給与所得など各種所得と合算されたのち課税される総合課税になります。
暗号資産(仮想通貨)で得た利益は雑所得なので、以下のような性質になります。
- 高所得ほど高税率な累進課税。
- 損失が翌年以降に繰り越せない
- 損失が出たときに他の所得区分の所得と損益通算できない
大儲けしても、税金でゴッソリ持っていかれますね。
なので、暗号資産のETFが上場されると人気が出る気がします。
株式なら申告分離課税になりますから。
日用品の売却
国税庁のホームページによると、資産の譲渡による所得のうち、生活用動産の譲渡によるの所得については課税されません。
具体的には 家具、じゅう器(食器などの日用品)、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得は非課税です。
ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個又は1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は課税対象です。
まとめ
勤務医の副収入の多くは、給与所得か雑所得として処理する必要があります。雑所得でなく事業所得と認められるには、その業務が相応の実態を伴っている必要があります。
雑所得は給与所得などと合算の上課税される総合課税です。事業所得のような恩恵はありませんが経費の計上は可能です。
不動産収入は、原則的に5棟10室の基準を満たせば事業所得です。そうでなければ不動産所得です。事業所得になると、青色申告の恩恵を受けられます。給与所得との損益通算が可能です。
株式投資の収入は譲渡所得・配当所得です。申告分離課税のため給与所得との損益通算はできません。特定口座で運用すると確定申告は簡単です。
FX取引は「先物取引に係る雑所得等」です。雑所得ですが、申告分離課税です。FXと株式での損益通算ができないのが地味に痛いです。せめて、損失は確定申告して繰越控除できるように準備しましょう。
暗号資産(仮想通貨)で得た所得は雑所得です。FXとことなり、他の雑所得同様の総合課税です。
日用品の売却による利益は非課税です。ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうは課税対象とされます。
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