医療系ポイントサイトでの小遣い稼ぎは、医療従事者のささやかな副業です。しかし、ポイントサイトで取得したポイントは課税対象になります。
所得税の確定申告で、ポイントも雑所得として申告しましょう。確定申告が必要ない方も、住民税の申告は必要になります。
今回はポイントと税金の関係について解説します。
ポイントは課税対象
国税庁ホームページに掲載された論文によると、「ポイントは課税されるべき経済的利益」です(1)。
しかし実際にポイントが課税対象となるかどうかは、ポイントが付与された状況によります。次の3つのステップで解説します。
- 値引きに相当するポイントは非課税
- 抽選に当選して貰うポイントは一時所得
- ほかのポイントに公式見解はない
- アンケートは雑所得の可能性大
- 事業所得となる場合もある
- 扱いが不明なポイントは雑所得とする
値引きに相当するポイントは非課税
国税庁ホームページのタックスアンサー(よくある税の質問)によると、代金に応じて付与されるポイントは、通常の取引における値引きと同様と考えられます。こうしたポイントは、課税対象にはなりません(2)。
抽選に当選して貰うポイントは一時所得
抽選に当選するなどして貰ったポイントは、一時所得です(2)。一時所得には50万円の特別控除があります。ほかの一時所得がなければ、ほとんどの場合は納税の必要がないです。
しかしポイントを含めた一時所得の金額次第では課税されます。一時所得の例は次の通りです。
- 年金
- 生命保険の満期保険
- 懸賞
- クイズの商品
- 競馬の馬券の払戻金
ほかのポイントには明確な記述がない
2021年1月時点では、それ以外のポイントについて、国税庁のホームページ上に明確な公式見解はありません。
しかし国税庁のホームページに掲載された論文ではいくつかの例が述べられています。ほぼ公式見解と考えてよいと思います。
アンケートのポイントは雑所得
ポイントと税に関する論文では、質問やアンケートへの回答等の対価としてのポイントは雑所得としています(1)。
アンケートで稼いでいるなら雑所得として申告することをお勧めします。
事業所得に付随して獲得したポイントは事業所得
同じ論文では、事業所得等の業務に関して資産等を購入した際に獲得したポイントについては事業所得としています (1)。
不動産経営など事業規模の副業をしておられる先生は、注意が必要です。
扱い不明のポイントは、雑所得とするのが無難
医療系ポイントサイトでは、様々な事にポイントが付与されます。
例えばWeb講演会視聴、視聴予約確認、コンテンツ開封、ログインボーナス、クイズに参加、などです。
これをどう扱うかは国税庁も明記していません。しかし、雑所得として申告するのが無難です。
雑所得は副業等の所得
所得には10種類あります。そのうち雑所得は他の9種類(下図)の所得に当てはまらないすべての所得です。
利子所得 | 配当所得 | 不動産所得 |
事業所得 | 給与所得 | 退職所得 |
山林所得 | 譲渡所得 | 一時所得 |
雑所得には様々な所得が該当します。具体例は以下に示します。
- 公的年金等
- 非営業用貸金の利子
- 暗号資産で得た所得
- 副業に係る所得
- 原稿料
- 印税
- アフィリエイト収入
- シェアリングエコノミーに係る所得
所得となるのは、ポイントを使用した時
ポイントが課税されるべき所得となる時期は、ポイントを使用した時です(1)。
国税庁のタックスアンサー(よくある税の質問)でも、ポイントを一時所得に算入する場合について、次のように明示されています。
「ポイント相当額を使用した日の属する年分の一時所得の金額の計算上、総収入金額に算入」(2)。
したがって、ポイントをポイントのまま保持している間は所得にならず、商品やAmazonギフト券に交換した時点で所得となります。
一部に換金しない限り大丈夫という解釈もあるようですが、公式見解は「ポイントを使用した」とあるため、他のポイントや商品に交換したときも所得として認識されると考えるべきです。
少額の雑所得でも確定申告するのか?
給与所得者で年末調整が済んでいて、他に申告すべき所得がなければ確定申告は必要ないです。
確定申告が必要ない場合、20万円に満たない雑所得を申告する必要はありません。
しかし何らかの理由で確定申告が必要なら、20万円未満でも、雑所得を申告する必要があるのです。間違えないように注意しましょう。
確定申告が必要な場合
バイト、転勤などの理由で2か所以上から給与所得を得ている場合は確定申告が必要です。
株取引、不動産所得、FX取引、暗号資産取引、講演料、原稿料などの所得がある場合も確定申告が必要です。
つまり、ほとんどのドクターは確定申告が必要です。
住民税の申告は絶対に必要
ここまでの確定申告の話は所得税についてです。所得税で雑所得の確定申告が不要だったとしても、住民税については雑所得の申告が必要です。
住民税での雑所得の申告は、金額に関係なく必要です。この点に注意が必要です。
申告するなら経費を計上しよう!
雑所得には必要経費が認められます。経費に計上できるものは多岐にわたります。
ポイント生活に関連した費用としては、インターネットなどの通信費、パソコンやスマホの購入代金、電気代、家賃などが経費になります。
持ち家の場合も、固定資産税、火災保険、住宅ローンの利子部分などは部分的に経費計上が可能です。
経費を計上する時、家事関連費と家事按分について理解する必要があります。いまから説明します。
個人用と事業用が切り離せない家事関連費
自宅で副業している場合など、個人用と事業用の両方で使い、まとめて支払っている費用を家事関連費といいます。
例えば、家賃、水道光熱費、ガソリン代、インターネット料金、携帯電話料金などです(3,4)。
こうした費用を経費に計上する際には、個人用の部分と事業用の部分を区別する必要があります。
このように家事関連費を区別することを家事按分(かじあんぶん)といいます。
家事按分(かじあんぶん)
家事按分とは家事関連費を個人用と仕事用に区別することです。
例えば、家賃を按分するなら、事業(副業)で使っている床面積をもとに按分します。 ただし、税務署に納得してもらえるような合理的な基準で按分する必要があります。
いくつか具体例を挙げます。
自宅兼事務所(賃貸)
事業用の部分の面積に応じて按分できます。事業用面積が全体の30%なら家賃の30%を経費に計上できます。
自宅兼事務所(持ち家)
持ち家の場合は、建物を減価償却資産として、事業用割合に応じて減価償却費を計上できます。
また建物に対する固定資産税や火災保険についても事業割合に応じて経費として計上できます。
水道光熱費
最近は水道代、ガス代については認められないことが多いそうです。ポイント活動程度なら電気代の一部を計上するのが妥当だと思います。
事務所として使っている部屋の面積、その部屋のコンセントの数、事業に充てた時間のいずれかで事業割合を算出しましょう。
電話、インターネット代
電話代は通話時間などで按分します。インターネット代も事業(副業)に使用した時間と個人的に使用した時間から事業割合を算出しましょう。
ガソリン代、車の保険料、修繕費、減価償却費
一定規模の個人事業では認められます。ブログなど運営していれば取材などの名目である程度は通りそうです。しかしポイント活動では認められないと思います。
まとめ
この記事の内容を簡単にまとめると次のようになります。
- ポイントサイトのポイントは雑所得
- 確定申告する人は、20万円未満の雑所得も申告する
- 所得税で確定申告しない人も、住民税で雑所得の申告が必要
- 雑所得には必要経費を計上できる
- 家事関連費は按分して経費計上できる
参考文献
1.『企業が提供するポイントプログラムの加入者(個人)に係る所得税の課税関係について』(上田 正勝、国税庁ホームページ内、税務大学校/研究活動)
2.『No.1907 個人が企業発行ポイントを取得又は使用した場合の取扱い』
(国税庁ホームページ内、タックスアンサー(よくある税の質問)/所得税)
3.『フリーランス&個人事業主のための確定申告 改定第5版』(監修 山本 宏、技術評論社)
4.『新型コロナ関連の経費も!はじめてでも簡単!確定申告 令和3年3月15日締切分』(監修 宮原裕一、 ASCII)
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