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わたしは2007年から2年あまり米国に研究留学していました。身分は博士研究員(Postdoctoral Fellow:通称・ポスドク)でした。気まぐれで当時の年俸と2020年のポスドクの年俸を比べてみました。その結果から、日本の凋落が見えてきました。
どうしてまたポスドクの給料を調べようと思ったんですか?
ちょっとした現実逃避・・・です。
米国ポスドクの給料は上昇
NIH(アメリカ国立衛生研究所)のサイトでポスドクの年俸を確認してみました。
ちなみに2007年(経験0年)のわたしの年俸は35000ドルでNIHの基準をやや下回ります。しかし田舎で物価が安かったので、その地域ではごく普通の水準でした。
1年目(経験年数0)の年俸で比較すると、2007年の36996ドル/年から、2020年には52704ドル/年に上昇しています。
経験年数 | 2007年 | 2020年 |
0年 | $36996 | $52704 |
1年 | $38976 | $53076 |
2年 | $41796 | $53460 |
3年 | $43428 | $55960 |
4年 | $45048 | $57456 |
5年 | $46992 | $59580 |
6年 | $48852 | $61800 |
7年 | $51036 | $64008 |
ポスドクの待遇が凄く良くなってません?
そう結論するのはまだ早いですよ。
米国ポスドク給与は日本の助教レベル
米国のポスドクの給与を日本円に換算してみましょう。為替レートの変動を考慮しているため、数値には幅があります。
経験年数 | 2007年 | 2020年 |
0年 | 400万~459万円 | 533万~591万円 |
1年 | 421万~483万円 | 536万~595万円 |
2年 | 452万~518万円 | 540万~599万円 |
3年 | 469万~538万円 | 566万~627万円 |
4年 | 487万~559万円 | 581万~668万円 |
5年 | 508万~583万円 | 602万~668万円 |
6年 | 528万~606万円 | 625万~693万円 |
7年 | 552万~633万円 | 647万~718万円 |
日本のポスドクの年収は300万~400万円です、場合によっては300万円以下のこともあります。
それに対して米国ポスドク1年目(経験年数0)の給与は2020年は536万~595万円に上昇しています。日本の大学ではポスドクより格上の助教の年収が約550万~600万円です。
米国ポスドクの年俸は、日本の大学教員(助教)の年俸に匹敵します。
ここまでをまとめます
- 米国ポスドクの年俸は、上昇している。
- 米国ポスドクの年俸は、日本の大学教員の年俸に匹敵する。
助教並みの給料ですか!
米国のポスドクはホクホクですね。
そうでも無いです。
2007年から2020年の間で42%も給料が増えているんですよ?
では、米国のポスドクの待遇は本当に改善しているか?
別の視点で見てみましょう。
平均年収との比較では待遇はやや悪化
つぎに、ポスドクの年俸を、アメリカ人の平均年収と比較してみましょう。
セントルイス連邦準備銀行のサイトで公開されているアメリカ人の平均年収(名目賃金)を見てみましょう。アメリカ人の個人年収(平均値)は2007年に38174ドル、2019年には54129ドルです。
一方、NIHの資料によると、2007年のポスドク1年目(経験年数0)の給料は36996ドルで平均年収の96.9%です。2019年のポスドク1年目(経験年数0)の給料は50,004ドルで、平均年収の92.4%です。
米国のポスドクの待遇は相対的にやや悪化しているといえます。
そんな米国ポスドクと同じ給与水準で働いている日本の大学教員は切ない立場ですね。
どうしてこんなことになったんですか?
では、日米の賃金の推移から考えてみましょう。
日本の名目賃金は減少
少し古い資料ですが、首相官邸の資料から日本と米国の名目賃金の推移も見てみましょう。
2000年代に入ってからほぼ一貫して日本の名目賃金は減少し続けています。それに対して米国の名目賃金は上昇しています。
名目賃金が米国では上昇し、日本では低下しているため、米国ポスドクの年俸は実質的に悪化しているにもかかわらず、日本からは大幅に改善して見えるのだといえます。
でも、日本は物価下落が続いているんでしょ?
だったら給料が下がっても大丈夫なんじゃないですか?
たしかに日本はデフレ(物価下落)が続いていると言われています。
ならば物価を考慮した実質賃金は上昇しているかもしれません。
そう、それです!
では実質賃金も見てみましょう。
日本では実質賃金も低下している
全国労働組合総連合(全労連)が作成した「実質賃金指数の推移の国際比較」(#3)を見てみましょう。実質賃金とは物価の変動を考慮した賃金のことです。
日本では実質賃金も低下していることがわかります。物価の下落以上に賃金が低迷していると言えます。
ここまでのまとめ
- 日本の名目賃金は低下し続けている
- 日本の実質賃金も低下し続けている
- つまり日本人は貧乏になっている
ドル円相場は円高なのに、日本人は貧乏なのか?
ドル円相場は2007年が1ドル108.17~124.111円、2020年が101.17~112.22円です。一見円高が進んでおり、相変わらず日本円が強いように見えます。しかし実際は違います。
先ほど、アメリカの名目賃金が上昇していることを示しましたが、それと同時にアメリカではインフレも進んでいます。つまりドルの価値は年々低下しています。
日本円も、価値が下落するドルと同様に価値が下落しています。ドルと比べてほんの少しだけ円の価値下落が穏やかなだけです。
円の価値が下落している状況で、日本人労働者の価値・地位が不変なら名目賃金は上昇するはずです。しかし、日本の名目賃金は上昇どころか下落しています。つまり日本の労働者の価値・地位も下落しています。
したがってアメリカ人目線でいえば、日本人は急激に貧しくなっています。
今回わかったこと
日本人の賃金は1995年以降右肩下がりです。いまや日本の大学教員(助教)の給与は、米国のポスドク程度に落ちぶれています。
日本は確実に貧しくなっていると言ってよいでしょう。
わたしのような勤務医にも他人ごとではありません。勤務医の平均年収が増加したなどという話は聞いたことがありません。(2010年~2019年まで医師の平均年収はほぼ横ばいです(#4)。)
日本の勤務医の経済的な地位は、世界の中でみれば確実に低下し続けています。
米国ポスドクの年俸はこのまま上昇を続けて、ドル円相場が一定と仮定してみます。すると米国ポスドクの年俸は2049年に1000万円を超え、2061年には1300万円を突破します。
日本の勤務医の給料は、いずれアメリカのポスドクレベルになるかもしれませんね。
これからは、優秀な人はどんどん外国に出ていく時代になると思います。
海外留学するか迷っている方は「研究留学のすゝめ」をどうぞ。
アメリカに留学することがある程度確定している方は、「研究留学術」のほうが役に立ちます。
留学準備から留学中までお世話になりました。
参考文献・資料
#1 Mean Personal Income in the United States(https://fred.stlouisfed.org/series/MAPAINUSA646N, Federal Reserve Bank of St. Louis)
#2 名目賃金の推移(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/seirousi/dai2/siryo3.pdf, 首相官邸)
#3 実質賃金指数の国際比較
(https://www.zenroren.gr.jp/jp/housei/data/2018/180221_02.pdf, 全国労働組合総連合)
#4 医師・医者の年収(https://www.nenshuu.net/shoku/cnt/shoku.php?shoku_id=8, 年収ガイド)
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