TLTは米国の長期物国債に特化したETFで、わたしの債券投資の軸足となっています。2022年2月になり、長期金利の上昇(つまりTLT価格の下落)を受けて、わたしはSBI証券を利用したTLTの定期購入を再開しました。今後のTLT価格の変化など、わたしの予測や方針もご紹介します。
概要
TLTはブラックロック社の運用するETF(上場投資信託)のひとつです。TLTは20年超えの長期国債に連動するETFになります。債券のETFはたくさんありますが、TLTは長期国債に特化した商品になります。ですからTLTの価格は米国の長期金利と逆相関します。
2022年2月に入り、米国債10年物利回りが2%の大台に乗りました。それによってTLT価格は$130台まで下落しています。かねてからの予定通り、米国債10年物利回りが2%を超えたため、SBI証券を利用したTLTの定期購入を再開しました。
米国では2022年3月以降の金利引き上げが予想されているため、TLT価格は今後も下落するでしょう。個人的にはTLTの底値は$120付近と想定しています。理由はトレンドラインからの予測とアメリカ人の平均賃金の推移です。ですから私は、定期購入を再開しつつ、$120周辺でのTLT大量購入を想定しています。
米国が2022年3月に金利引き上げることは、ほぼ確実視されています。ですから注目すべきは、利上げペースです。2022年3月のFOMCで0.5%の金利引き上げがあるようなら、株式・債券市場には大きな影響があるでしょう。
米10年物国債利の利回りが2%を突破
2022年2月の半ばになり、米国の10年物国債利回りが2%の大台に乗せました。これは実に2年半ぶりのことです。(日本経済新聞 2022年2月12日)
米国が2月10日に発表した消費者物価指数(CPI)が前年同月比で7.5%でした。前月のCPI(7.0%)からさらに物価上昇が加速しています。(日本経済新聞 2022年2月12日)
これに伴い、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを加速すると予想されたことが理由です。
利回りが上昇するということは、債券価格は下落しています。実際に債券価格はどうなったのでしょうか?
わたしは、SBI証券を利用して、iシェアーズのTLT(米国債20年超ETF)を軸足にした債券投資をしています。TLTの価格を見てみましょう。
TLT価格が約10か月ぶりに$130台に突入
TLTの価格は、2022年2月11日の終値で$138.25まで下落しました。TLTが$140を切るのはおよそ10カ月ぶりのことです。
わたしのTLT平均購入価格である$136台に限りなく近づいています。
わたしのTLT売買履歴
わたしがTLTの定期購入を再開するまでのSBI証券での売買履歴を簡単にご紹介します。
わたしは2019年1月からTLTを毎週定期購入していました。しかし、2020年2月にはTLTが高騰したため購入を停止しました。そして2020年12月末に所有するTLTの大半を売却しています(下図)。このとき、投資資金を全額回収し、残りはTLTとして保有し続けました。
2021年前半にはTLT下落を受けて、一時はTLTの定期購入を再開しました。しかしTLT価格が$140を超えた時点で購入を停止しました。
その際に、TLT購入再開の目安の一つとして、10年物国債利回りが2%を超えた時を、設定していました(TLTの定期購入を再開!その理由と今後の計画は?)。ですから機械的に判断してた結果、TLTの定期購入を再開しました。
今回も、TLTが$140を超えるようなら購入を停止する予定です。しかし、TLT価格はしばらく下落すると考えています。理由は次に説明します。
今後もTLT価格は下落する可能性大
TLT価格は、米国の長期金利に逆相関します。言い換えれば、金利が上昇すればTLT価格は下落します。では、米国の金利はどうなるのでしょうか。
米国では2022年中に3回の利上げが予想されています。利上げとなればTLT価格は下落します。
さらに、予算成立をめぐる米国議会の混乱で、米国での国債発行ペースが低下する可能性があります。(日本経済新聞 2022年2月11日)。長期債や超長期債の需給悪化により、利回りに上昇圧力がかかりやすくなります。
つまりTLT価格については、さらに大きく下げることを覚悟する必要があります。ではどのくらいまで下落するのでしょうか?$120が一つの目安と考えています。理由は次に説明します。
もし、TLTへの投資を始めようと考えているのなら、今のうちに証券口座を開設しておきましょう。SBI証券ならリアルタイムの取引も可能です。
TLT価格は$120付近が底値と予測
わたしは、$120付近をTLTの底値と考えています。もちろん瞬間的にはTLT価格が$120を下回る可能性はあります。しかし長期にわたって$120を大きく下回り続ける可能性は低いと考えます。根拠は2つあります。
根拠1:トレンドラインからの予測
2013年12月の安値と2018年11月の安値を結んだトレンドラインを引いてみました。すると、2022年2月11日時点で、トレンドラインは$119周辺にあります。そして$120という切れの良い数字が心理的な節目にもなります。ですから、このあたりでTLT価格が落ち着く可能性が高いと考えます。
根拠2:平均賃金からの推定
さきほどは、チャートからトレンドラインを用いてTLT価格の下限を$120前後と予測しました。つぎにファンダメンタルな観点からも予測してみましょう。着目したのは、米国の平均賃金の推移です。
米国の平均賃金は、上昇を続けています。つまり、労働者の価値を一定と仮定とすれば、米ドルの価値が下落しています。為替相場風に表現すればドル安・労働者高です。
具体的には米国では平均年収が$38174(2007年)から$54129(2019年)と変化しています。米ドルを基準にすれば、労働者の価値が約41%上昇しています。
対米ドル | 労働者の価値 | 増減率 |
2007 | $38174 | |
2019 | $54129 | +41% |
そして労働者を基準にすれば、米ドルが約30%下落しています。
対労働者 | ドルの価値 | 増減 |
2007 | 1人/$38174 | |
2019 | 1人/$54129 | -30% |
TLTと米ドルの関係でも同じことが言えます。米ドルの価値が低下しているため、対米ドルでTLTの価格は上昇する筈です。仮に対米ドルでのTLTの上昇率が平均賃金の上昇率と同じならば、TLTの上昇率は41%です。(TLTの発行済み口数が大幅に変化しない前提です。)
2007年のTLT最安値が約$83なので、41%上昇するとすれば、2019年の推定最安値は約$117と計算できます。実際の2019年の最安値は$118.5くらいです。この推定方法は、悪くなさそうです。
対米ドル | TLTの底値 | |
2007 | 約$83 | |
2019 | 約117 (推定) | 約$118.5 (実測) |
2007年の米国の長期金利は4.5%~5.0%くらいですから、もし今後の米国の長期金利が4.5%に到達しても、TLTは$120程度で落ち着く可能性が高いと予測します。
ここでは、米国が大規模な量的緩和を行った2020年以降の数値を使いませんでした。これは量的緩和が終了した後を予測するには、量的緩和開始前のデータが適切だと考えたからです。
今後の予定
わたしの今後の方針をご紹介します。
当面は米ドル現金比率を高めにする
わたしは2020年12月に保有するTLTの大半を売却しています。その資金は米ドル現金、米ドル建MMF、BNDなどの形で待機しています。
今回、TLTの定期購入は再開するものの、TLTへの大規模な資金移動は控えます。株式の購入を控えて現金やMMFの割合を維持あるいは高めていく予定です。
現金は米ドルを基本とする方針です。日米の金利差が拡大することを考慮すれば、当面は円安ドル高となると考えられるからです。
TLT価格が$130を下回るならペースアップ
今後、TLT価格が$130を下回るなら、購入額を倍増する予定です。この際の購入資金の半分は、待機させていた米ドル・米ドル建てMMFとする予定です。
TLT価格が$120付近なら大量購入
そして、目論見通りにTLT価格が$120に近づいたら、大量購入を行います。その時点での待機資金を20%ずつ分散して投入したいと思います。つまり120前後に指値注文を5つ入れることを予定しています。
追記:その後、2022年4月には瞬間的に120ドルを割り込んだため、100万円分をTLTに追加投資しました。詳細は下の記事を参照ください。
金利引き上げペースに注目
今後、米連邦準備理事会(FRB)は2022年3月にも利上げを始めると予想されています。2021年3月頃の予想では2022年後半に利上げと予想されていました。つまり利上げの予想はかなり前倒しされています。
利上げ時期も問題ですが、2022年3月の利上げは、ほぼ確実視されています。ですから利上げペースにも注目しましょう。過去は0.25%ずつ刻むようにして利上げをしていたFRBですが、もし0.5%利上げするようなことがあれば、株式市場・債券市場には大きなインパクトを与えるでしょう。
2022年3月の連邦公開市場委員会(FOMC)からは目が離せません。
追記:結局2022年3月のFOMCでは0.25%の利上げとなりました。2022年4月末の時点では5月の利上げ幅に関心が集まっています。
この記事は、あくまで個人的な考えを述べたものです。TLTという個別の銘柄について取り上げていますが、実際の投資は自己責任でお願いします。
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