医師の転職には(医師に限りませんが)、主に3つの方法があります。つまり「知人の紹介」、「仲介業者」、「自分で求職」です。それぞれのメリットとデメリットを簡潔にまとめると、下の図のようになります。詳細は本文をご覧ください。
知人の紹介 | 仲介業者 | 自分で求職 | |
メリット | 実情が分かる。 馴染みやすい。 | 求人情報豊富。 交渉が楽。 | マイペースで できる。 興味のある求人 に集中できる。 |
デメリット | 交渉しづらい。 辞めづらい。 | 電話・メールが煩わしい。 細部が伝わらない。 仲介手数料分の不利? | 情報収集が面倒 交渉が面倒 |
医師転職の3つの方法
医局人事を離れた医師は、開業するか転職することになります。転職先を探す場合、主に3つの方法があります。
- 知人の紹介
- 自分で応募
- 仲介業者を利用
それぞれについて解説します。
知人の紹介
真っ先に思いつくのは、知人の職場に誘われるケースです。知人とは、医局や部活の先輩であったり、かつての同僚だったりします。医局を円満に離れる場合、教授の斡旋という場合もあります。
知人の紹介のメリット
知人に紹介してもらう主なメリットは以下の通りです。
- 転職先の状況が把握しやすい
- 転職先になじみやすい。
転職先の状況が把握しやすい
第一のメリットは、転職先を決める前に転職先候補に関する内部情報が得られることです。
職場の雰囲気、人間関係、などの情報は、現場の人間でないと把握できません。こうした「現場の実情」を仲介業者や病院の採用担当者から得ることは不可能です。見学に行ったところで、現場の実情を見極めることは非常に困難です。
その点、すでに職場にいる知人からの誘いであれば、現場の実情についてある程度は信頼できる情報を得ることができます。
もちろん、知人から得る情報は、その知人によるフィルターやベクトルがかかった情報であることには注意しましょう。
転職先になじみやすい
もう一つのメリットは、転職後に職場に馴染みやすいことです。転職時の不安材料には「人間関係」や「電子カルテ操作」などがあります。
初対面の人と良好な人間関係を築いていくのは、大変な作業です。その点、転職先に知人がいると安心感が違います。知人を介して、新しい同僚との人間関係も構築しやすくなります。
電子カルテの操作も不安材料の一つです。会ったばかりの同僚に電子カルテの操作を教えてもらうのは、なかなか頼みづらいことです。その点、知人になら比較的気軽にお願いすることができます。
知人の紹介のデメリット
知人に紹介してもらう主なデメリットは以下の通りです。
- 条件交渉をしづらい。
- 辞めづらい。
条件交渉をしづらい
転職前のデメリットとしては、条件交渉をしづらい点が挙げられます。例えば、給与、当直の免除、といった医師同士で不公平感の出やすい条件については、交渉を知人にお願いすることは難しいケースがあります。
辞めづらい
転職後のデメリットとしては、辞めづらい点が挙げられます。個人的は非常に大きなデメリットだと思います。
転職してみたものの「自分の思い描いた職場ではなかった。」ということもあります。こうした時も、知人の紹介だと辞めづらくなります。紹介してくれた知人の顔に泥を塗る形になる可能性があるからです。
紹介してくれた知人も退職を納得してくれる状況でないと、知人との関係を絶つ覚悟も必要です。
仲介業者を利用
仲介業者を利用する場合のメリット・デメリットについても見てみましょう。
仲介業者を利用するメリット
仲介業者を利用する主なメリットは、次の通りです。
- 情報収集の手間がかからない
- 難しい勤務条件の交渉が可能
情報収集の手間がかからない
仲介業者を利用すれば、求人情報を収集する手間はなくなります。むしろ多くの求人情報を紹介されすぎて、消化しきれないことさえあります。
求人がかかっている理由なども、ある程度は教えてもらえます。例えば、常勤医の退職、常勤医の業務軽減、病床の用途変更などです。
ただし、知人からの紹介と違い、人間関係など現場の実情に関する情報は入ってくることはないでしょう。
とにかく手間がかかりませんので、忙しい方、転職を急いでいる方には向いている方法になります。
難しい勤務条件の交渉が可能
仲介業者にお願いすることで、難しい条件の交渉は楽になります。たとえば時短勤務、週4勤務、当直免除などの交渉です。
多くの医師はこうした交渉が下手ですが、仲介業者は交渉に慣れています。もし仲介業者を利用するなら思い切って相談してみましょう。
また、病院との面接・直接交渉の場面でも援護していただけます。例えば「退職は後任が決まってから」などと無理難題を言う医療機関もあります。こうした場合に、常識的な範囲の期間(例えば6カ月前に退職を申し出る)に持ち込んでくれます。
仲介業者を利用するデメリット
仲介業者を利用する主なデメリット以下の通りです。
- 電話やメールでの連絡が増えて煩わしい。
- 細かい要望が伝わりにくい。
- 医療機関の出費が増える
電話やメールでの連絡が増えて煩わしい。
仲介業者に登録すると、ものすごい勢いで連絡が来るようになります。とくに複数の業者に登録するとすごいことになります。
誰と何の話を何処までしたのか、という細部が把握しきれなくなることが多々あります。また、電話や面談のスケジュール管理が大変になります。
しかし複数の業者と一度は話してみても良いと思います。話しやすい人、何となく反りの合わない人、話がかみ合わない人、返答が早い人・遅い人、などエージェントも十人十色です。
複数のエージェントと接触してみて、自分が話しやすい・付き合いやすいエージェントを選ぶのも一つの方法です。
細かい要望が伝わりにくい。
仲介業者を挟むということは、すべてが伝言ゲームになるということです。情報伝達の過程で微妙に内容が変わってしまうかもしれません。
エージェントは転職のプロですが医師ではありません。こちらの要望や希望の細かいニュアンスが伝わらないことは多々あります。
また、医師担当と医療機関担当の2名による分業制をとる仲介業者もあります。この場合、医師と医療機関の間に2名のエージェントが入っているため、さらに情報伝達が難しくなります。
医療機関の出費が増える
転職が決まった場合、医療機関は仲介業者に手数料を支払う必要があります。手数料は最大で求職者の年収の100%!にもなるようです。
医療機関としても軽視できない金額となるため、給与交渉の面で不利になる可能性はあるかもしれません。
自分で応募
自分で医療機関などに連絡を取って、転職先を探すことも可能です。では、自分で応募するメリットとデメリットはなんでしょうか?
自分で応募のメリット
自分で求人を探して、自分で応募するメリットは以下の通りです。
- 自分のペースで転職活動ができる。
- 興味のある求人に集中できる。
自分のペースで転職活動ができる。
自分で求人に応募する最大のメリットは、自分のペースで転職活動ができることです。しかし後述するデメリットに挙げたように、情報収集には手間と時間がかかります。
ですから転職を急いでいない場合、じっくり転職先を探したい場合に向いている方法です。
興味のある求人に集中できる。
知人からの紹介であれ、仲介業者からの紹介であれ、興味のない求人情報がいくつも持ち込まれることがあります。場合によっては、それらが非常に煩わしいこともあります。
お断りの電話を入れたり、メールを書くのも一手間かかります。
その点、自分で見つけた求人に自分で応募するのであれば、興味のない求人に振り回されることはありません。
自分で応募のデメリット
自分で求人を探して自分で応募するデメリットは以下の通りです。
- 情報収集に手間と時間がかかる。
- 交渉を自分で行う必要がある。
情報収集に手間と時間がかかる。
ウェブサイトで求人を公開している医療機関も少なくありません。また、複数の仲介業者の匿名求人情報を分析すれば、募集している病院を特定することもそれほど難しくありません。とはいえ、手間と時間はかかります。
また、医療機関を特定できてからも問題はあります。病院の採用担当者は多忙なことが多いです。簡単に連絡がつかないことも多々あります。
それに、ニセ医者と疑われるかもしれません。すると、担当者に取り次いでもらえない、連絡がついても取り合ってもらえない、といった可能性があります。
したがって、忙しい先生にはあまり向いていない方法になります。
交渉を自分で行う必要がある。
自分で応募するということは、勤務条件・給与の交渉を自分で行う必要があるということです。詰めておくべきことは多岐にわたります。海千山千の事務長などを相手にするのは、並のメンタルでは大変かもしれません。
しかし、何度も転職を経験している強者であれば、自分で交渉するのはアリだと思います。仲介業者に払う報酬が必要なくなる分、好待遇を引き出せる可能性はあります。
とはいえ確定しておくべき内容は多岐にわたります。
ザックリ分けても以下のようなことは確認し、明確にすべき事柄でしょう
支給額 | 勤務条件 | その他 |
提示額 | 業務内容 | 契約期間 |
手当は 別途支給か | 勤務日数・ 勤務時間 | 退職の届出 時期 |
当直手当 | 外来コマ数 | 定年 |
通勤手当 | 担当患者数 | 医賠責 |
時間外手当 | 年次有給休暇 | 駐車場代 |
その他 の手当 | 年末年始・ 夏季休暇 | 食事代 (職員食堂) |
定期昇給 | 当直回数 | |
学会補助 | 早出・遅番 | |
社会保険 | 呼び出し | |
祝日の扱い* |
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