基本情報編でインドネシアのイメージは何となくわかりました。
でも良い点・悪い点が分かりづらいです。
では基本情報編のデータをベースに、メリット・デメリットにまとめ直してみましょう。
概要
わたしの独断と偏見による分析結果では、投資先としてのインドネシアのメリットは、①人口ボーナス期が続く、②経済成長が期待できる、③まだ人件費が安い、④島国であること、です。
デメリットは ①ジャワ島一極集中、②地震大国、③製造業の育成が遅れている、④インフラ不足、⑤のんびりした国民性、です。
インドネシアは、投資先としては十分に魅力的な国だと考えます。しかし実際投資する前に インドネシア株をあつかったETF、インドネシア国債などのパフォーマンスを検討する必要があります。
概要だけで十分な方はインドネシア③株式編へどうぞ。。
前の記事を未読の方はインドネシア①基本情報もどうぞ。
投資対象としてのインドネシアのメリット
基本情報編で紹介したインドネシアの特徴をもとに、投資対象としてのインドネシアのメリットを考えてみます。インドネシアのメリットには以下のようなものがあります。
- 人口ボーナス期が続く
- 経済成長が期待できる
- まだまだ人件費が安い
- 島国である
人口ボーナス期が続く
インドネシアはまだしばらく人口増加が続くのが魅力です。
他の東南アジア諸国は違うんですか?
タイの人口はすでにピークに達しています。
ベトナムの人口増加はあと20年ほどで頭打ちになります。
インドネシアは、今後も当面は人口が増えていきます。下のグラフはインドネシア人口の推移を示しています。このグラフによると、人口がピークを迎えるのは2060年前後になります。基本的に人口は国力に直結しますから、インドネシアは今後しばらくは国力が伸長すると考えてよいでしょう。すくなくとも今後10年以上は人口ボーナス期が続くと言えます。
これに対して、タイの人口はまもなく減少に転じます。またベトナムの人口ボーナス期は終わりを迎えつつあります。
経済成長が期待できる
2015~2019年までインドネシアの名目GDP成長率は平均で5%以上を維持しています。
成長率ではフィリピンやベトナムには及びません。
なぁんだ、残念。
ガッカリすることはありません。
もともとインドネシアのGDPは東南アジア最大だから、絶対値では大きな成長です。
インドネシアのGDP成長率は5%以上の高い水準を(2020年を除き)維持しています(#1)。しかも世界4位の人口を抱える大国のため、東南アジアでは最大のGDPを誇ります(下図)。当然、GDP成長率が同程度の他の東南アジア諸国と比べても、経済成長のインパクトは大きくなります。
しかもインドネシアは電力供給が安定しているというメリットがあります。
停電がないのがメリットなんですか?
停電すると工場が操業できません。
停電が少ないと、工場の移転に有利です。
インドネシア自体の労働人口が豊富なこと、電力供給が安定(#2)していることから製造業の育成(や誘致)には有利と言えます。対照的にタイやベトナムは電力を輸入している状況です。電力供給が不安定では、工業化が頭打ちになる可能性が出てきます。
インドネシアは世界の主要地域とアクセスが良好です。
工業製品の輸出には有利な位置です。
たしかに、中国とインドがすぐそこですね。
合わせて人口28億人以上もいますね。
地理的にも、中国、インド、ヨーロッパ、アフリカなどの市場にアクセスが良い(下図)ため、やはり輸出に有利な立地です。世界の工場としてのポテンシャルは十分に持っています。
そもそもインドネシア自体が人口2億6千万以上の巨大市場です。
その巨大市場がもっと大きくなるわけですね?
すると、外国資本がさらに流入するでしょう。
インドネシア自体の人口が多く国内市場規模が大きいことも魅力です。企業にとっては儲かるチャンスが大きい訳です。儲かりそうなところにお金が集まるという原則を考えれば、今後もインドネシアへの資本流入は増加すると思われます。資本が流入すれば株価は上昇が期待できます。
まだまだ人件費が安い
インドネシアの人件費はまだまだ安いです。
でも安さではベトナムやラオスには及びません。
じゃあ、人件費の安いベトナムやラオスが有利なんですか?
付加価値の小さい・単純な製品については特にその傾向が強くなります。
でも複雑な製品なら十分対抗できます。
インドネシアは停電も少ないですしね!
インドネシアは上位中所得国に当てはまります(#1)。人件費はまだまだ安い部類であり、今後も製造業での発展余地はまだあります。
ただし、東南アジア諸国ではフィリピン、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアなどのほうが人件費は安いです。繊維製品など比較的単純な製造業に関しては、これらの国のほうが有利になります。
実際、インドネシアで成長しているのはエレクトロニクスや自動車などの分野です(#1)。
島国である
私が思うに、インドネシアが島国であること自体がメリットです。
島国がメリット?
海上輸送を利用しやすい。
外敵の侵入を受けにくい。
などです。
インドネシアには島国であるメリットがあります。
海運を利用しやすい
工業製品や鉱物資源の輸出入を考えた場合、海運が利用しやすい環境であることは大きなメリットです。中国、インド、ヨーロッパ、アフリカ東岸へのアクセスが非常に良いという立地の良さもあります。
物流拠点としての地位は、すでにシンガポールが確保していますが、インドネシアも地の利を生かして貿易できることでしょう。
戦場になりにくい
島国は四方を海という天然の堀に守られた状態のため、守りやすいというメリットがあります。地政学的にみても紛争が多発するリムランドから少し離れています(#6 サクッとわかるビジネス教養 地政学 )。インドシナ半島諸国に比べれば戦場となるリスクは低いと言えるでしょう。
東南アジア諸国は中国とインドという古くて新しい2大大国に挟まれており、どちらにも影響を受けます。しかしインドネシアと違い、インドシナ半島諸国は両国と地続きであったり、他国に水源(チベット高原)を抑えられています。
東南アジア諸国への投資を考える時、ベトナム、タイ、カンボジア、ミャンマーなどインドシナ半島諸国と比べてインドネシアが地理的に有利と言えます。
投資対象としてのインドネシアの デメリット
メリットは分かりましたから、デメリットを教えてください。
ではインドネシアの問題点をいくつか挙げましょう。
基本情報編で紹介したインドネシアの特徴をもとに、投資対象としてのインドネシアのデメリットを考えてみます。インドネシアのデメリットには以下のようなものがあります。
- ジャワ島一極集中
- 地震大国
- 製造業の育成が遅れている
- インフラ不足
- のんびりした国民性
ジャワ島一極集中
インドネシアの人口も経済もジャワ島に過半が集中しています。
過度の集中は、公害・渋滞・用地問題などの問題があります。
しかも地震大国です。
それにジャワ島に大災害があると、、、、
東京に大地震があったら・・・
と同じことですけどね。
インドネシアの人口も経済もジャワ島に一極集中が目立ちます。人口密度も1平方キロメートルあたり1000人に近く、過密状態なので地価が高騰しやすいと思われ、大規模な工場用地が必要な製造業にはリスクと言えます。
ただし東京都の人口密度は、1平方キロメートル あたり6000人を超えます(#3)。ジャワ島自体の人口密度は愛知県(約1400人)、千葉県(約1200人)、福岡県(約1000人)と大差ありませんから、それほど過密とは言えないかもしれません。
インドネシア自体もこの問題は理解しています。そのため東カリマンタンのバリクパパン近郊への遷都を2024年に開始することを計画しています(#4)。遷都はインフラ関連企業や不動産会社にとっては大きなビジネスチャンスになりそうです。
ジャカルタは今後も経済の中心になるそうです。
新首都とジャカルタは、
米国のワシントンDCとニューヨークみたいな関係になるんですね。
地震大国
インドネシアは地震や津波の被害が多いんですよ
そういえばインドネシアも津波被害がありましたね。
インドネシアは火山が多く、地震も多い国です。しかもジャワ島に人口・経済の過半が集中しています。もしジャワ島に大規模な災害が生じた場合は、インドネシア経済に非常に大きな悪影響が出るでしょう。
製造業の育成が遅れている
インドネシアは経済規模の割には工業化が遅れた地域です。
どうしてですか?
地下資源が豊富なので、
手っ取り早い資源輸出に頼りがちだったからです。
でも
でも?
それはむしろ「伸びしろ」かもしれません。
インドネシアはもともと錫や化石燃料などの鉱物資源が豊富です。そのため資源輸出に依存して成長していた側面があります(#2)。資源輸出による所得分配を製造業の育成(外資誘致を含む)に使用してこなかったことが影響し、製造業の育成が遅れています。
ただ、これは今後の「伸びしろ」があると言えなくもありません。
インフラ不足
ジャワ島のインフラ整備は遅れています。
そういえば高速鉄道計画も工事が遅れているらしいですね。
ジャカルタの都市鉄道や高速道路の整備も続いていますが、なかなか進まないんです。
インドネシアの中心となるジャワ島でさえ、インフラ整備が遅れています。ジャカルタの大量高速鉄道(MRT)、軽量高架鉄道(LRT)、高速道路などの整備は勧められていますが、計画の進捗はゆっくりしています。用地買収の資金不足、制度の不備、自治体間の利害調整の難航などが原因です(#5)。
インフラ受注のチャンスではあるため、各国が名乗りを上げています。しかし経済成長についていえば、インフラ整備の遅れは不安材料といえます。
のんびりした国民性
インドネシアの人々の国民性は、「のんびり」しています(#1)。実直で勤勉なミャンマー、手先の器用なカンボジア、といった製造業に有利となる国民性ではありません。
わたしの考え
わたしにとって、インドネシアは投資の対象として十分に魅力的な国です。しかし実際に投資できるかは、また別の問題です。インドネシアをあつかったETFなどのパフォーマンスを確認する必要があります。インドネシア株式の代表的なETFであるEIDOや、インドネシア国債への投資について実際に検討してみたいと思います。
この記事は投資の結果を保証するものではありません。投資はあくまで自己責任でお願いします。
最後までお疲れさまでした。
もしよければインドネシア③株式編へどうぞ。。
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参考文献
#1 サクッとわかるビジネス教養 東南アジア(助川成也 監修、新星出版社)
#2 世界の製造業「インドネシアの今」(https://keikakuhiroba-mfi.com/archives/13473#i-3)
#3 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
#4 東カリマンタンへの首都移転、2024年中に開始 (ビジネス短信 2019年09月03日 JETRO(日本貿易振興機構))
#5 インドネシア経済の成長加速を掲げるジョコ大統領2期目の課題(山名晴樹 日本政策投資銀行)
#6 サクッとわかるビジネス教養 地政学(監修 奥山真司、新星出版社)
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