マイナ保険証は事実上の義務化!これからどうなる?

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マイナ保険証が事実上の義務化

マイナ保険証とは

マイナ保険証とはなんでしょう?まずそこから確認しましょう。

そもそも「保険証」は、病院や薬局を利用する際に提示するものです。健康保険の被保険者であることを証明すれば、医療費の自己負担額を1割~3割に抑えることが出来ます。従来は紙製やプラスチック製の保険証が利用されています。こうした従来の保険証はマイナンバーカードとは全く別のカードです。

そしてマイナ保険証とは、マイナンバーカードを保険証としても使えるようにしたものです。

現行の保険証は廃止

日経新聞によると「現行の健康保険証が2024年秋に廃止」(#1)されます。するとマイナ保険証以外に、被保険者の資格を証明するものが無くなります。

マイナンバーカードの取得は義務ではないもののマイナンバーカードが無いと保険証が無い状態となります。つまり、「マイナンバーカードの取得は事実上の義務に近くなる」(#1)わけです。

マイナ保険証のメリット

マイナ保険証には様々なメリットがあると言われています。メリットは立場によって異なります。立場とは、大雑把に言うと以下の3つのことです

  • 利用者(患者)
  • 国・行政機関
  • 医療機関

それぞれの立場でのメリットを書き加えると以下のようになります。

  • 利用者(患者)のメリット
    • 自分の健診・医療データを確認できる
    • 確定申告の医療費控除が簡単になる
  • 国・行政機関のメリット
    • 医療ビックデータの収集・活用
    • マイナンバーカードの普及
  • 医療機関のメリット
    • 保険証の不正利用を防止
    • 医療機関同士で情報を共有

利用者(患者)のメリット

自分の健診・医療データを確認できる

利用者のメリットとは、自分の医療データを確認できることです。日経新聞によると「利用者はカードの個人向けサイトで過去に受けた健康診断や診療、投薬の記録を確認できるようになる。」そうです。(#2)

どの程度の内容が確認できるのか詳細は不明ですが、画像やカルテの医師記録欄や看護記録、読影レポートなどの閲覧は難しいでしょう。せいぜい健診の結果、病名、処方内容くらいのようです。

どの程度メリットといえるのか微妙な感じです。

確定申告の医療費控除か簡単になる

確定申告における医療費控除の手続きで、マイナポータルを通じて医療費通知情報を自動入力することが可能になります。そもそも医療費控除とはなんでしょう?

医療費控除は、1年間に支払った医療費の金額に応じて、その一部を所得金額から差し引くことが出来る仕組みです。所得金額が少なくなる分だけ、税負担が軽くなるメリットがあります。

ただし1年間で支払った医療費が一定金額を超えた場合にのみ利用できます。2022年時点では支払った医療費が10万円を超える場合に利用できます。

とはいうものの、40歳未満の人では医療費控除の対象者はそれほど多くないでしょう。アラフィフの私ですら医療費控除を利用したことはまだ1回しかありません。

その意味では、健康な若者にとっては、メリットがありません。そもそも医療機関を利用しないからです。一方で、すでに闘病生活中の方にとっては一定のメリットがあります。

国・行政機関のメリット

医療ビックデータの収集・活用

マイナ保険証が普及すれば、診療情報とマイナンバーが紐づけされます。「診療データをまとめたプラットフォームができれば創薬の進歩医療の効率化につながる」(#3)と期待されています。

現状の保険証のシステムでも、データ収集はそれなりにできます。しかし転職・退職などで保険証が変わると追跡が難しくなります。その意味ではマイナ保険証にメリットが少しはあるのでしょう。

マイナンバーカードが普及する

従来の保険証が廃止されれば、マイナンバーカードなしでは保健医療が受けられません。マイナンバーカードの実質的な義務化です。

これまで、国が躍起になって普及を目指していたマイナンバーカードが一気に普及することは間違いないでしょう。こちらが、国の最大の目的かもしれません。もはや後戻りはないでしょうから、せいぜいマイナンバーカードによる行政の効率化(?)が進むことを期待しましょう

とはいえ、電子カルテになって医師の業務がどれだけ楽になったのか考えると、明るい展望は描けません。確かにカルテ記載や処方箋の作成は楽になりました。

しかし膨大な書類の作成が必要なことは変わりないです。入院診療計画書、同意書、主治医意見書、訪問看護指示書、医療要否意見書、診断書、その他種々の書類の作成に追われる日々です。

そして、書類の電子化は限定的で基本は紙ベースだったりします。ごく一部は電子カルテ内で完結しますが、多くは電子カルテで作成し紙に印刷、残りは最初から手書きで対応していたりします。

こうした現状を考慮すると、役所のデジタル化も形だけで、紙ベース運用が長く続きそうです。いったいどれほど効率化できるものやら。

医療機関のメリット

医療機関での保険証不正利用がへる

日経新聞によると「期限の切れた保険証の利用や、保険証の保有者になりすまし不正利用を防ぎやすくなる」そうです。(#2)

こうした保険証の不正利用は、医療機関の悩みの種です。医療機関は窓口で患者から診療報酬のうちの自己負担分のみを受け取ります。基本的には診療報酬の1~3割です。

のこりの7〜9割は、後日に健康保険の保険者(つまり全国健康保険協会や健康保険組合)が医療機関に支払います。しかし、保険が期限切れなどの場合、保険者はお金を支払いません。医療機関は7〜9割の診療報酬を取りはぐれます。これは軽視できない損失と言えます。

この損失には、医療機関の従業員の給与に悪い影響があるかもしれません。

マイナ保険証によって不正利用が防げるのであれば素晴らしいことです。しかしそのためには、期限切れなどがリアルタイムで反映される必要があります。

お役所仕事で、期限切れが反映されるまで1カ月かかるようでは全く話になりません。

医療機関同士で情報を共有できる

マイナ保険証が導入されると、患者が同意すれば過去の処方歴などを医療機関や薬局が共有できるようになります。患者の同意があれば「医療機関同士がこうした情報を共有し診療に生かすこともできる」ようになります(#2)

これらも、システムが額面通りに機能すれば素晴らしいメリットとなります。たとえば以下のようなメリットが考えられます。

  • 併用禁忌薬の回避
  • 併用注意薬の把握
  • 重複処方の予防
  • 副作用歴の把握

しかし、実際に役立つかは分かりません。次にいくつかのケースを想定してみます。

本当に医療機関で役立つのか?

実際にマイナ保険証のシステムは医療機関で役立つのでしょうか?結局は、どれくらい電子カルテと連動するか次第でしょう。いくつかのパターンに分けて考えてみます。

  • 電子カルテ端末内で高度に連動する
  • 電子カルテと連動しないが同一端末で稼働
  • 電子カルテ端末と別端末になる

電子カルテと高度に連動

仮に、電子カルテとマイナ保険証を通じた診療情報が高度に連動できる場合を考えてみましょう。例えば、処方する際に併用禁忌や重複処方、副作用歴に基づいて自動的に警告が表示されると理想的です。

もっと具体的に言うと、

「A医院が処方しようとした時、B病院の処方と重複であると警告がでる」

とか、

「C病院で抗菌薬を処方しようとすると、D病院に入院中の薬疹歴によりブロックされる」

といった具合です。

しかし我が国政府のIT技術レベルから考えて、こうした便利な連携機能が実装される可能性は高くないでしょう。

ただし、「将来的には電子カルテや電子処方箋の共有も可能になる見通し」(#3)とあるので、将来的には電子カルテの全国共通化・高度な情報共有が達成される可能性も微レ存としておきます。

この場合の問題は、医療従事者が必要もないのに個人の診療情報を閲覧することです。たとえば芸能人や政治家などの有名人にはそのリスクが高いです。

ですから院外の医療情報へのアクセス権限の管理が重要な課題となります。

電子カルテと連動しないが同一端末で稼働

もう少し具体的に言うと「電子カルテと同じ端末内で、完全に孤立した別アプリケーションで処方データを閲覧」できる程度の状態が想定されます。

この場合、ディスプレイが1台しかない電子カルテ端末では、処方入力画面(電カル)と処方歴(マイナ)が同時に表示できず苦労しそうです。

いかにも、使いにくそうです。お薬手帳のほうがディスプレイ内で場所を取り合わない分マシかもしれません。

電子カルテと別端末で稼働

具体的には、「マイナ保険証の医療データ閲覧用端末」と「電子カルテ端末」の2台のコンピューターが必要な場合です。スペース・費用の両面からすべての場所で2つの端末を設置することは非現実的です。

もし、マイナ保険証用の端末が病院事務室に1台だけとなったら、実際に医師が処方する診察室・病棟では他院の診療情報は確認できません。絵に描いた餅です。

リアルタイムでの情報更新が不可欠

こうした処方歴などはリアルタイムに限りなく近い形でアップデートされる必要があります。同じ日に複数の医療機関を受診することは決して珍しいことではないからです。

「患者の同意」が無い場合は?

今のところ、「患者の同意」なくして患者の処方内容などを確認することは出来ません。マイナ保険証が普及しても「患者の同意」が得られないケースは想定する必要があります。

すぐに思いつく範囲では・・以下の2通りがあります。

  • 一般外来での問題 睡眠薬を希望する症例
  • 救急外来での問題 意識障害の症例

一般外来での問題 睡眠薬を希望する症例

マイナ保険証を用いた処方歴の確認には「患者の同意」が必要です。ですから患者が同意しなかった場合は、重複処方を防ぐことは難しいです。

とくに睡眠薬の処方を求めて、いくつもの医療機関を巡回している疑いのある方が問題です。重複処方された睡眠薬は、過量内服転売などの形で利用されている可能性があります。医療機関としても慎重な対応が必要です。

個人的な考えではありますが、「患者の同意」が得られない場合、一般的な内科外来では「睡眠薬のみを希望する一見さん」はお断りせざるを得ないでしょう。

救急外来での問題 意識障害の症例

救急外来では意識のない方に対応する場合が多々あります。そんなとき処方内容が診断の手がかりになるケースは多々あります。

つまり処方内容から意識障害や失神と関連しそうな疾患が推測できることがあります。具体的には糖尿病、致死性不整脈、心不全、肝不全、腎不全、てんかん、心房細動、精神疾患などです。対応する医師としては処方内容を知りたいものです。

本人の荷物にお薬手帳があれば、本人に処方歴を開示する意思があると解釈してお薬手帳の内容を確認します。しかしマイナ保険証しか持っていない場合、意識障害のため「患者の同意」を得ることが出来ず、処方歴が確認できない可能性があります。

マイナ保険証が普及するとお薬手帳を持たない方が増えるため、意識障害への対応が難しくなるケースがでてくると思います。

マイナ保険証の義務化がチャンスになる企業

最後に、マイナ保険証の実質義務化がチャンスとなる企業を確認してみましょう。単純に考えても以下の企業にはビジネスチャンスとなるでしょう。

  • 顔認証付きカードリーダーのメーカー
  • 電子カルテのメーカー
  • アマゾン

顔認証付きカードリーダーのメーカー

顔認証付きカードリーダーは、マイナ保険証を用いたオンライン資格確認に必要な機器になります。原則的にすべての医療機関と薬局が導入するため、かなりの台数が売れ、メンテナンスや更新も含めて安定収入が見込まれます。

顔認証付きカードリーダーのメーカーは以下の通りです。

  • 富士通Japan株式会社
  • パナソニック コネクト株式会社
  • 株式会社アルメックス
  • キヤノンマーケティングジャパン株式会社
  • アトラス情報サービス株式会社

このうち、一般人が株式を取得できるのは、キヤノンマーケティングジャパン株式会社だけのようです。株価はすでに高値圏にあるようです。

電子カルテのメーカー

電子カルテメーカーは、オンライン資格確認との連動などでのシステム更新にチャンスがありそうに思います。マイナ保険証による処方・診療情報共有のためにも、電子カルテの更新が必要でしょう。

電子カルテメーカーは診療情報を人質に取っているも同然のため、医療機関はシステム更新に投資せざるを得ません。

主要メーカーのシェア(2020年度)は以下の通りです。

メーカーシェア
富士通Japan34%
ソフトウェアサービス20%
シーエスアイ14%
NEC7%
ソフトマックス4%
ワイズマン3%
レスコ3%
亀田医療情報3%
富士フィルムヘルスケアシステムズ2%
日本IBM2%
キヤノンメディカルシステムズ1%
その他7%
出所:株式会社ソフトフェアサービス公式サイト(https://www.softs.co.jp/e-map/share.html)

Amazon

マイナ保険証の導入は、オンライン資格確認とほぼ同義になります。そしてオンライン資格確認と電子処方箋の二つは、オンライン調剤の前提条件でもあります。

今回、マイナ保険証が実質義務化されることから、アマゾンによるオンライン調剤も既定路線と考えて間違いなさそうです。

現在の調剤界隈の莫大な利益をAmazonがかっさらう可能性は高いように思います。

この記事は、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資はあくまでも自己責任でお願いします。

<参考文献>

#1 誘導から「義務」に転換 (日経新聞2022/10/14 朝刊)
#2 マイナ保険証、24年秋移行 (日経新聞 2022/10/13 朝刊)
#3 医療DXの基盤に マイナ保険年証秋移行 (日経新聞  2022/10/14 朝刊)

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