新興国投資のインドネシア編もいよいよ最終章です。
よろしくお願いします。
今回は、インドネシア国債ですね。
概要
インドネシア国債の格付けはBBB (信用リスク中程度) で、米国債には劣ります。インドネシア国債10年物利回りは6~7%台でおおむね推移しており、10年間で約2倍になります。ただし円高・ルピア安の影響で円換算での利益は65%/10年です。
わたしが大好きな米国債20年超ETF(TLT)は、2011年初から10年間で円換算で72%値上がりしています。TLTの分配金も考慮すれば、インドネシア国債の成績をさらに上回ります。
インドネシア国債に投資するとすれば、地域分散の意味合いが強いです。ほかにも分散すべき地域があるのでインドネシア国債に資金を振り向けるとしても、ごく一部になります。わたし程度の(少ない)資金量なら新興国債券ETF(EMB)のほうが現実的です。
概要だけで十分な方は、もしよければ
次のベトナム①基本情報編をどうぞ。
インドネシア①~③を未読の方は、もしよければ読んでください。
インドネシア①基本情報編
インドネシア②メリット・デメリット編
インドネシア③株式編
インドネシア国債の格付け
国債ってリスクが低いんですよね?
一般的な傾向としては株式より国債はリスクが低いです。
でも国によってリスクは違います。
インドネシア国債の信用リスクは中程度です。
中程度?
投資適格とされる基準は一応満たしています。
まずインドネシア国債の格付けを確認しましょう。S&Pによる格付けでは、インドネシア国債の格付けはBBBです。いちおう投資適格(信用リスク中程度)といったレベルです。
ちなみにアメリカ国債はAA+(信用リスクは極めて低い)、日本国債はA+(信用リスクは低い)となり、インドネシアよりも格付けが上です。
格付け | 信用リスク | |
アメリカ | AA+ | 極めて低い |
日本 | A+ | 低い |
インドネシア | BBB | 中程度 |
インドネシア国債は年利6%超の高利回り
インドネシア国債10年物の利回りは2021年8月でも6%台を維持しています。
すごい高利回りですね!
そうですね。
でも外国の国債に投資するなら為替リスクも考える必要があります。
実際のところはどうなんです?
程度具体的に計算してみましょう。
つぎにインドネシア国債の利回りを確認しましょう。インドネシア国債は高い利回りが特徴です。下のグラフは10年物のインドネシア国債の利回りのチャートです。ここ10年ほどの間、平均でも7.5%前後の利回りがあることが分かります。
インドネシア国債を10年運用した場合の利益
インドネシア国債の運用益を、なるべく具体的に計算してみましょう。インドネシア10年物国債を 2011年初から2020年末まで10年間運用して、満期償却したケースを考えてみます。計算を簡単にするために、年利7.5%で2011年初から10年間運用したとします。
ルピア建てで”+100%”(約2倍)
すると単純計算で10年間の運用益はおよそ+100%(約2倍)になります。ただし、これはインドネシアの通貨であるルピアでの話です。日本で生活するなら円に換算する必要があります。
10年で2倍!
悪くないですね。
でも円換算だと目減りしてしまいます。
円換算なら”+65%”に低下
インドネシア・ルピアは対円で下落を続けています。
それによって円換算の利益は約35%目減りします。
かなり目減りしますねぇ
それでも単純計算で年利5%弱はありますけどね。
それでは、2011年以降のインドネシアルピアと日本円の関係を見てみましょう。2013年以降は円高ルピア安が進行していることが分かります。2011年初のレートは1円≒110ルピアですが、2020年末のレートは1円≒134ルピア程度です。
インドネシア10年物国債を10年運用して約2倍になったとしても、円建てなら約1.65倍(+65%)にパフォーマンスが低下します。年利でいえば5%弱になります。
アメリカ国債ETF(TLT)との比較ではリターンが劣る
じゃあ、先生はインドネシア国債を買ったんですか?
個別では買ってないです。
えー、結局買ってないんですか?
どうしてです?
わたしの大好きなTLT(米国債20年超ETF)のほうが成績が良かったから・・・
先生はホント、TLTが好きですね。
でも、新興国債券ETFの形で一応はインドネシア国債に投資してますよ(汗)。
では、インドネシア国債は非常に優れているのでしょうか?そこで、わたしが愛用しているTLT(iシェアーズ米国債20年超ETF)と比較してみます。10年物国債と、20年超の国債(しかもETF)ではそもそも条件が違いますがご容赦ください。
TLTはドル建てで+57%
2011円初にTLTを購入し、202年末に売却したとします。TLT価格はおよそ2011年初で約94.12ドル(正確には2020年終値です)、2021年末のTLT価格は147.78ドルです。分配金を無視してもキャピタルゲイン(値上がり)が約57%あります。
TLTは円換算なら+72.4%
さらにドル/円相場も確認しましょう。2011年初は1ドル=81.18円、2020年末は1ドル=103.24円とドル高が進行しています。
TLTのパフォーマンスは円換算では、キャピタルゲイン(値上がり分)だけで約72.4%になります。2011年からの10年間でいえば、分配金を考慮せずともTLTのパフォーマンスはインドネシア10年物国債より優れています。
インドネシア国債に投資する意味は「地域分散」
じゃあ、インドネシア国債に投資する意味はないんですね?
いやいや、そんなことはありません。
地域分散の意味はあります。
でも、買ってないんでしょ?
インドネシア国債
わたし程度の運用資産だと、個別に国債を購入して地域分散を実現するのが難しいんですよ。
それに・・・
それに?
管理が面倒くさいんです。
ETFだととにかく簡単なので、つい・・・
インドネシア国債への投資は、アメリカ国債への投資に比べると信用リスクが高く、得られるリターンはTLT(米国債20年超ETF)以下になります。リターンを考えれば インドネシア国債を主力にする理由は特にないと思います。しかしインドネシア国債に投資するメリットはあります。インドネシア国債に投資するとすれば、やはり「地域の分散」が一番の理由になるでしょう。
わたしは、運用資産の8割前後をアメリカに集中投資しています。しかしアメリカに集中投資した場合、アメリカに何かあった場合に大きな損害を被る可能性があります。たとえばアメリカが物理的にダメージを受ける状況やアメリカが金融市場で敗北する状況ですね。
こうした事態が生じる可能性がどの程度あると考えるかによります。わたしの個人は「金融市場のルールをアメリカが決めている以上、アメリカが金融市場で敗北する可能性はかなり低い」と考えています。しかし、物理的ダメージの予測は難しいです。アメリがが物理的に大ダメージを負う確率は高くないと思いますが、それこそ「万が一」に備えることは必要です。そのための地域分散投資になります。
しかし新興国で分散投資するなら中国・インド・南アフリカ・南米諸国なども考慮する必要があります。なので、わたしがインドネシア国債に投資するとしても、債権投資全体のごく一部になります。わたし程度の(少ない)資金量だと分散投資が難しいため、ETFでの投資を考慮する必要があります。
新興国債券のETFとしてはEMB(iシェアーズ J.P.モルガン・米ドル建てエマージング・マーケット債券 ETF)が代表的です。実際にわたしもEMBを少量保有していますが、ETFなら少額でも分散投資が可能で管理も簡単です。しかし新興国投資はリスクもありますので、資産の大部分を新興国に振り向けるようなことはおススメしません。
この記事の内容はあくまでも個人の考えです。投資による利益を保証するものではありません、投資はあくまでも自己責任でお願いします。
最後までお疲れさまでした。もしよければ
次のベトナム①基本情報編をどうぞ。
インドネシア①~③を未読の方は、もしよければ読んでください。
インドネシア①基本情報編
インドネシア②メリット・デメリット編
インドネシア③株式編
コメント