
これまでの分析で、ベトナムの現状はある程度わかりました。
でも実際に投資するとなるとどうなんです?

わたしの資産運用はETF中心です。個別銘柄の情報収集や分析は難しいので・・・
ベトナム株式のETFとなるとVNMやDFVTが代表的です。
パフォーマンスはDFVTのほうが良いと思います

じゃあ、 DFVTを買うんですね?

それが、 DFVTの運用会社はドイツ銀行なんですよね。

何か問題でも?

安心しきれないというか何というか・・
概要
ベトナムは東南アジアでも、もっとも経済成長が著しい国と言えます。ベトナムは2050年まで5%/年以上の高い成長率を維持すると予想されています。ベトナムの株価指数であるVN指数も上昇を続けています。そしてVN指数の上昇率はGDP成長率を上回っています。さらにベトナム・ドンは対米ドルでわずかに下落傾向ですが、比較的安定しています。
ベトナム株式の代表的ETFはVNMや DFVTです。VNMのパフォーマンスは良いとは言えず、パフォーマンスの良いDFVTでもVN指数には劣ります。構成銘柄の違いがパフォーマンスの違いの原因であり、背景には外資規制の影響が考えられます。
ETFでベトナム株式に投資するならDFVTがよさそうですが、問題がないとは言えません。運用会社がドイツ銀行である点です。ドイツ銀行のリスクは各所で指摘されており、もしドイツ銀行が破綻した場合は早期償還となる可能性などがあります。
一方、ベトナムの個別株への投資は、売買手数料の高さと情報入手の難しさがネックです。とくにSBI証券での手数料が2%といういのは、インドネシア株の手数料(1%)以上に厳しいです。従って、わたしには難易度が高いです。
インドネシアのときと同じく、「ベトナムで収益を上げる米国企業」を介して、ベトナムの経済成長のおこぼれを頂戴したいと思います。

概要だけで十分な方は、もしよければ
ベトナム④国債編もどうぞ。

前の記事をまだ読んでいない方は、ぜひ読んでください。
ベトナム①基本情報編
ベトナム②メリット・デメリット編
になります。
ベトナムのGDPは成長を続けている

ベトナムは高い経済成長率を維持し続けています。

2020年はどうですか?

2020年はさすがにパンデミックの影響を受けました。
でも東南アジア諸国でも唯一プラス成長を達成しました。
しかし・・

しかし?

2021年になって新型コロナウィルス感染者が激増しています。
少なくとも短期的な悪影響は避けられないでしょう。
まずベトナムの経済成長について確認しましょう。ベトナムの名目GDPはおよそ3400億ドル(2020年)で、一人当たりGDPでは3500ドル程度の下位中所得国にあたります。
東南アジアでは最高レベルの経済成長率を誇っており、ベトナムのGDP成長率は2015年~2019年の平均で約7.7%/年と高い水準を維持しています。
プライスウォーターハウス・クーパースはベトナムは2050年まで5.1%/年以上の経済成長を続け、世界で20番目の経済規模になると予測しています(#1)

2020年は新型コロナウィルス(SARS-CoV2)のパンデミックもあり、低成長に終わりました。それでも2.9%と東南アジアで唯一のプラス成長を達成しています。 しかし2021年になって急激な患者数増大により、短期的には経済的な見通しが難しくなっています。
株式指数(VN指数)はGDP成長を上回る

ヴェトナム株式の魅力は、他にもあります。

何ですか?

近年もGDP成長率以上に株価が伸びていることです。
一般的にはGDPが成長すると、株価も上昇する筈です。ベトナムの代表的株価指数であるVN指数とベトナムの名目GDPを比較してみましょう。下の図は VN指数のチャートになります。

株価上昇がGDP成長を上回る
tradingview.comではVN指数のデータが確認できるのが2012年の途中からのため、2012年末から2020年末の期間でGDP成長率と株価の上昇率を比較してみましょう。
VN指数は2012年末で約480で、8年後の2020年末には約1060です。ベトナムの名目GDPは2012年に約4,073兆ドン、2020年に 約7192兆ドンです。
伸び率はGDPが約1.76倍、VN指数が約2.21倍です。2013年から2020年の期間でみれば名目GDP以上にVN指数が伸びています。
名目GDP (兆ドン) | VN指数 | |
2012年 | 4073 | 480 |
2020年 | 7192 | 1060 |
変化率 | 約1.76倍 | 約2.21倍 |
これは、2011-2020の期間で名目GDP成長に株価が追従できないインドネシアと比べると魅力的に映ります。(独断と偏見による新興国投資。インドネシア③ 株式編)
もちろん短時間で3倍・5倍というような爆発的な成長を期待する時期ではありませんが、ベトナムはいまだに高い経済成長率を誇っています。ベトナム株式への投資自体は考慮に値するように思います。

ベトナム経済は、安定的な成長をまだまだ期待できそうです。
ただし一攫千金を狙う状況ではないと思います。
では、次にベトナム株式に投資するETFについて見てみましょう。
代表的なベトナム株式ETFはVNMとDFVT

ベトナム株式のETFって何があるんですか?

主なETFはVNMやDFVT・3087・XFVTになります。

どれが良いんですか?

DFVTと3087・ XFVT は上場する市場が違うだけで、中身は同じです。

じゃあ、VNMとDFVTのどちらが良いですか?

ではまずVNMとDFVTの基本情報を確認してみましょう。
ベトナム株式に投資するETFとしては主にVNMやDFVT、3087、XFVTなどがあります。 DFVT(シンガポール)、3087(香港)、XFVT(スイス、フランクフルト、シュトゥットガルト) は上場する市場が違うだけでDFVTと同じETFです。ですから以後はVNMとDFVTだけ記載します。
VNMとDFVTの基本的なデータは以下のようになります。
VNM | DFVT(XFVT) | |
運用会社 | VanEck | ドイツ銀行 |
市場 | 米国 | 香港、 シンガポール、 スイスなど |
インデックス | MVIS ベトナム・ インデックス | FTSE ベトナム・ インデックス |
純資産総額 (百万ドル) | 537.224 | 428.25 |
経費率 | 0.64% | 0.85% |
まず注目すべきはETFの資産総額です。なぜなら資産総額はETFの人気を反映するからです。人気のないETFは繰上償還されるリスクが高くなります。繰り上げ償還されると、投資家が想定していた長期運用は中止せざるを得なくなります。
資産総額はVNMもDFVTもほぼ同程度で、規模はまずまずの大きさです。しかし経費率ではVNMのほうが若干の有利のようです。
では実際のパフォーマンスを見てみましょう。
パフォーマンスはDFVTのほうが優れる
ではVNMとDFVT(現地コード:HD9)のチャートを確認してみましょう。ベトナム の代表的株価指数であるVN指数も一緒に比較します。
VNMは殆ど伸びていない
残念なことに VNMとDFVTは VN指数 に追随できていません。とくに VNMはひどい有様です。2012年初と2021年8月の比較で VN指数は+235%(3倍以上)の増加を示していますが、 DFVTは +96.7%(2倍弱)の増加にとどまり、 VNM に至っては+12.75%しか増えていません。

しかしよく考えるとVN指数は「ベトナム・ドン」ベース、DFVTとVNMは「米ドル」ベース、なので条件が異なります。それぞれの為替変動を考慮して成績を再確認してみましょう。
米ドルベースに換算してもほとんど結果は変わらない
VN指数に米ドル(USD)/ドン(VND) の為替変動も考慮に入れてみましょう。2012年初は、1 USD≒ 21000 VNDで、2021年8月初は1USD≒22700 VNDです。つまり約7.5%のベトナム・ドン安となっています。ですからVN指数のパフォーマンスは米ドル換算で+217.4%です。
DFVTとVNMは米ドル・ベースなので、 対ドルでの為替変動の計算をする必要はありません。パフォーマンスはDFVT:+96.7%で、 VNM:+12.75%です。
DFVTの上昇率は決して悪くないですが、それでもVN指数の半分以下という残念な結果です。

ETFがVN指数に及ばない理由
DFVTやVNMのパフォーマンスがVN指数に及ばない理由は、構成銘柄の違いだと思われます。VN指数は、ホーチミン証券取引所上場の全銘柄からなる時価総額加重平均指数です。それに対して、 DFVTは約20銘柄、VNMも36銘柄に過ぎません。
しかも、ベトナムでは外資規制が厳しく、外国企業による株式保有比率の上限が定められています。そのためDFVTやVNMではVN指数と同様の配分で投資できないのだと思われます。
DFVTへの投資にもためらいがある

ベトナム株式に投資するならDFVTで決まりですね!

うーん・・

DFVTに何か問題でもあるんですか?

運用会社がドイツ銀行っていうのがねぇ、
それに2012年から2017年あたりを見てみると・・・

殆ど伸びていませんねぇ
DFVTは長らく低迷していた
DFVTのチャートをみていると2012年~2017年半ばまではあまり伸びずに-10から+50%くらいで行ったり来たりしています。VN指数がその間も順調に右肩上がりにもかかわらずです。
2017年後半からのパフォーマンスが良いと言えるかもしれませんが、安定性に欠ける印象はぬぐえません。
運用会社がドイツ銀行
パフォーマンスでみるとVNMよりもDFVTが良いのですが。DFVTの運用会社はドイツ銀行です。破綻寸前と長年言われているドイツ銀行とは、個人的にはあまり関わりたくないです。
もちろんETFの中身である証券は保管機関に預けられ、運用会社とは分別管理されます。つまりドイツ銀行が破綻しても資産は保全されます。
しかしETFを引き継ぐ会社なければ償還されます。つまり、その時点での基準価格で現金化・返金されます。これは、長期保有が基本方針の場合には、重大なリスクになります。
なにより運用会社の違法行為で分別保管されていないという最悪のケースもないとは言えません。なにしろドイツ銀行は色々やらかしている銀行として有名です。
ドイツ銀行のリスク(の一部)
ドイツ銀行の危うさは、ネットで調べればいくつも情報が出てきます。
とくに問題なのは、ドイツ銀行はサブプライムローン問題の戦犯としてアメリカ当局に恨まれていることです。その結果、2016年にはアメリカ当局から140億ドルの罰金を請求されました(#2 渡邉哲也「金融で読み解く次の世界」徳間書店)。
しかし2021年になっても、米金融当局がドイツ銀行に対し法令順守に不備があると指摘しています。 米金融当局いわく「ドイツ銀が米金融当局とリスク管理慣行の是正に向けた合意を結んでいたにもかかわらず、改善されなかった。」とのこと(#2 Robert Schmidt、Jesse Hamilton ドイツ銀行を米金融当局が戒告、コンプライアンス不備で-関係者 Bloomberg)。
つまり サブプライムローン問題でアメリカ当局からキツーイお叱りを受けたのに、5年たってもリスク管理ユルユルの体質が改善してないと指摘(怒!)された。ということの様です。これは危険な香りがします。
またドイツ銀行は会計上の数字のマジックで黒字化しているそうです(#2)、つまり保有する債券の評価損は計上せず、満期まで保有するという名目で取得時の取得原価を資産として計上しているのだとか。これでは本当の経営状態が分かりませんね。
ベトナム株の個別銘柄投資

ETFがだめなら個別の銘柄に投資するしかないですね?

もちろんそういう選択肢もあります。
個別銘柄の分析が難しくても、VN指数に近い構成で投資すれば、
それなりのパフォーマンスになるかもしれません。

それですよ!

でも、わたしは基本的に個別銘柄で投資はしないことにしてます。
SBI証券だと手数料が片道2%!と無視できません。
ETFでベトナム株に投資するのは、ためらわざるを得ない状況です。このような状況でも、個別銘柄に投資して利益をあげることは出来るかもしれません。しかし、わたしは個別銘柄への投資はあきらめました。理由は3つです。
- 個別銘柄への投資はそもそも難しい
- VN指数と同じ構成を目指すのはアリだが・・面倒くさい
- ベトナム株は取引き手数料が高い
個別銘柄への投資はそもそも難しい
わたしがETFを利用しているのは、個別銘柄への投資は銘柄選定が難しいからです。とくにベトナム企業に関する情報を日本で手に入れるのは困難です。ETFで利益が期待しがたいからと言って個別銘柄に手を出すのは本末転倒です。
VN指数と同じ構成を目指すのはアリだが・・面倒くさい
VN指数は全銘柄の時価総額による加重平均で算出しています。なので時価総額上位の20銘柄程を時価総額加重平均で購入すれば、VN指数に追従できるかもしれません。
少し前の資料(2021年3月31日時点)ですがベトナムのホーチミン証券取引所に上場されている株式の時価総額は20.7兆円、上位20銘柄はそのうち約14兆円と約70%を占めています。
しかしそれは、勤務医が片手間で行う投資としては、あまりにも面倒くさいです。なにより取引手数料の問題があります。
ベトナム株は取引き手数料が高い
ベトナム株の取引き手数料はどうしても高くなりがちです。わたしがメインで使っているSBI証券でも、取引き手数料は2%!(消費税別)です。また最低手数料は1,200,000ベトナムドン(約5800円、 2021/9/7時点)となっています。購入時にも売却時にも手数料がかかるため、往復で4%の負担になります。これは無視できない金額です。
ベトナム株式を取り扱っていてネット取引が可能な証券会社には、他にアイザワ証券があります。こちらは手数料は1.65%で、最低手数料を5,500円としています。手数料の点ではアイザワ証券が若干優れています。
手数料を考慮すると、最低でも1回の取引が20~30万円以上でないと手数料がかなりの高負担となりますので注意しましょう。。
さらに、証券会社の取扱銘柄の問題もあります。
上位20銘柄に自分で投資するならアイザワ証券
ネット証券でベトナム株式を取り扱っているのはSBI証券とアイザワ証券です。
わたしがメインで利用しているSBI証券も、 取扱銘柄はかなり多いと思います。しかし ホーチミン証券取引所での時価総額上位20銘柄で、SBI証券では取扱っていない銘柄があります。2021年8月末時点ではベトナムゴム工業:GVR(時価総額10位)、VPバンク:VPB(同12位)、ノバランド不動産:NVL(同14位)、ペトロリメックス総公社:PLX(同18位)などをSBI証券では取り扱っていません。
いっぽう2021年8月末時点で、アイザワ証券は上位20銘柄を全て取り扱っています。もし時価総額上位20銘柄に自分で分散投資するなら、アイザワ証券で口座を開設する必要がありそうです。
ベトナム株はだめでも、ベトナムの経済成長の恩恵は受ける

結局、ベトナムに投資できないじゃないですか!

いやいや。ベトナムの経済成長で儲かるのはベトナム企業だけじゃないですよ。

あー、インドネシア株の時と同じ理屈ですね。

ベトナムで儲けている日・米企業に投資すれば、ベトナムの経済成長の恩恵を受けられるというわけですね?

その通り!
ベトナムの経済成長率は依然として高い水準を維持しています。しかもGDP成長率を株価の上昇率が上回ります。なんとかこの勢いに乗っかりたいものです。そこで考えるのはベトナムに進出している日・米企業に投資することで、ベトナムの経済成長の恩恵を受ける作戦です。
International Trade Administration(ITA)の公式サイトによる分析では、通信、IT、発電、輸送インフラ、環境技術、航空、防衛産業、教育などの分野に米国企業のビジネスチャンスがあります。また人口増加と個人の所得の増大のため、将来的にはヘルスケア分野も有望であるとされています。 ITA はまた飼料用作物のベトナムへの輸出も重要なビジネスとしています(#3 Market Opportunities, Vietnam )。
ITAの分析は、投資する銘柄やセクターを選択する際の参考になると思います。例えば、わたしの場合はXLI(資本財セクターETF)を介して、GE(電力、再生可能エネルギー、航空、ヘルスケア)やボーイング(航空・防衛)に投資しています。
しかし2016年時点では米国からベトナムへの投資額は約4億3000万ドルに過ぎません。いっぽう日本から投資額は約30億ドルです。日本からの投資は米国からの投資をはるかに上回ります(#4)(新版 地図で見る 東南アジアハンドブック)。ですからベトナムに進出している日本企業に投資するという選択肢も勿論あります。
新興国投資には債券投資もある

投資には株式の他にも債券もありますよね。
ベトナム国債はどうです?

それについては次の記事で分析しましょう。
ここまで、ベトナム株への投資を考えてきましたが新興国投資には債券投資もあります。次はベトナム国債について分析したいと思います。
この記事はあくまでも個人的見解を述べています。投資はあくまでも自己責任でお願いします。

最後までお疲れ様でした、もしよければ
ベトナム④国債編もどうぞ。

前の記事をまだ読んでいない方は、ぜひ読んでください。
ベトナム①基本情報編
ベトナム②メリット・デメリット編
になります。
参考資料
#1 Market Overview, Vietnam – Country Commercial Guide, International Trade Administration
#2 渡邉哲也「金融で読み解く次の世界」徳間書店
#3 Market Opportunities, Vietnam – Country Commercial Guide, International Trade Administration
#4 新版 地図で見る 東南アジアハンドブック (著:ユーグ・テルトレ、訳:鳥取絹子、地図製作:セシル・マラン/メラニー・マリー、原書房)
#5 ベトナム時価総額上位 20 銘柄(2021 年 3 月 31 日時点) (ニュース証券株式会社)
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