これまでの分析で、インドネシアの将来性は感じました。
でも実際に投資するとなるとどうなんです?
わたしの資産運用はETF中心です。個別銘柄の情報収集や分析は難しいので・・・
インドネシア株式のETFとなるとEIDOが代表的です。
じゃあ、EDIOを買えばよいんですね?
それが、EIDOのパフォーマンスが良くないんです。
詳しく教えてください!
概要
インドネシアは東南アジア最大の経済規模を誇り、しかも高いGDP成長率を維持しています。インドネシアの株価指数であるジャカルタ総合指数も上昇を続けています。
しかし近年の株価指数の上昇率はGDP成長率を下回っています。さらにインドネシア・ルピアの下落続いています。そのため、インドネシア株式の代表的ETFであるEIDOは2013年以降は下降トレンドが続ています。EIDOの長期保有でインドネシアの経済成長の恩恵を享受することは難しそうです。
しかし、インドネシアの個別株への投資は、売買手数料の高さと情報入手の難しさがネックです。インドネシアで個別銘柄に投資するのも、わたしには難易度が高いです。
わたしは、インドネシア企業ではなく「インドネシアで収益を上げる米国企業」を介して、インドネシアの経済成長のおこぼれを頂戴したいと思います。
概要だけで十分な方は、インドネシア④国債編へどうぞ。
前の記事を未読の方は、インドネシア①基本情報編や、
インドネシア②メリット・デメリット編もいかがですか?
インドネシアのGDPは成長を続けている
インドネシア高い経済成長率を維持し続けています。
2020年はどうですか?
2020年はさすがにパンデミックの影響を受けました。
2021年もかなりの被害を受けています。
でも・・
「パンデミック終息後の成長に期待」ですね!
まずインドネシアの経済成長について確認しましょう。インドネシアの名目GDPは11200億ドル(2019年)で、一人当たりGDPでは4200ドル程度の上位中所得国にあたります。
東南アジアでは最大の経済規模を誇り、東南アジア諸国のなかで唯一G20メンバーとなっています。インドネシアのGDP成長率は2015年~2019年の平均で約5.5%/年と高い水準を維持しています(サクッとわかるビジネス教養 東南アジア)。
ただし2020年は新型コロナウィルス(SARS-CoV2)のパンデミックもあり、低成長に終わりました。パンデミック終結後の成長に期待したいところです。
株式指数(ジャカルタ総合指数)はGDPほど伸びていない
インドネシア株式に懸念材料はあります。
何ですか?
近年はGDP成長ほどには株価が伸びていないことです。
一般的にはGDPが成長すると、株価も上昇する筈です。インドネシアの代表的株価指数であるジャカルタ総合指数(JCI)とインドネシアの名目GDPを比較してみましょう。下の図は ジャカルタ総合指数(JCI) のチャートになります。
2001年~2020年なら株価上昇がGDP成長を上回る
ジャカルタ総合指数は2001年初で約450、20年後の2020年末には約5900です。インドネシアの名目GDPは2001年に約1,790兆ルピア、2020年に 約15,000兆ルピアです。
伸び率はGDPが約8.3倍、ジャカルタ総合指数が約13倍です。2001年から2020年の期間でみれば名目GDP以上にジャカルタ総合指数が伸びています。
名目GDP (兆ルピア) | ジャカルタ総合指数 | |
2001年 | 1,790 | 450 |
2020年 | 15,000 | 5,900 |
変化率 | 約8.3倍 | 約13倍 |
2011年~2020年なら 株価上昇がGDP成長を下回る
では2011年から2020年の10年間で見てみるとどうでしょうか。ジャカルタ総合指数は2011年初で約3400、2020年末には約5900です。 一方で名目GDPは2011年に約7,800兆ルピア、2020年に 約 15,000兆ルピアです。
伸び率は名目GDPで1.9倍、ジャカルタ総合指数で1.7倍です。このことから、経済成長自体が急激なものから穏やかなものに変わっていることが分かります。さらに最近はGDPほど株価が伸びていないことも分かります。
名目GDP (兆ルピア) | ジャカルタ総合指数 | |
2011年 | 7,800 | 3,400 |
2020年 | 15,000 | 5,900 |
変化率 | 約1.9倍 | 約1.7倍 |
短時間で3倍・5倍というような爆発的な成長を期待する時期はすでに終わりと考えてよさそうです。とはいえ、インドネシアはいまだに高い経済成長率を誇っています。インドネシア株への投資自体はまだ考慮してよいと思います。
インドネシア経済は、爆発的な急成長から安定的な成長へすでに移行しています。
一攫千金を狙う状況ではないと思います。
では、次にインドネシア株式に投資するETFについて見てみましょう。
代表的なインドネシア株式ETFはEIDO
インドネシア株式のETFって何があるんですか?
主なETFはEIDOやIDXになります。
どっちが良いんですか?
個人的にはIDXは資産総額が小さすぎて検討対象外です。
消去法ではEIDOになりますけど・・・
けど・・・?
わたしは買わないことにしました。
インドネシア株式に投資するETFとしては主にEIDOやIDXがあります。それぞれの基本的なデータを見てみましょう。
まず注目すべきはETFの資産総額です。資産総額はETFの人気を反映するからです。人気のないETFは繰上償還されるリスクが高くなります。繰り上げ償還されると、投資家が想定していた長期運用は中止せざるを得なくなります。
ちなみにEDIOの資産総額が$335.91 M(M=百万)、IDXの資産総額は $31.94 Mです。ざっくり言えばIDXよりEIDOのほうが10倍人気があります。それにしてもIDXの資産総額$31.94 Mはあまりにも寂しい数字です。正直この時点でIDXは、わたしの中では検討の対象外です。
ですから以降はEIDOについてのみ分析します。
EIDO | IDX | |
運用会社 | BlaclkRock | VanEck Vectors |
インデックス | MSCI インドネシア IMI 25/50 インデックス | MVIS インドネシア インデックス |
純資産総額 (百万ドル) | 335.91 | 31.94 |
経費率 | 0.59% | 0.57% |
EIDOの分析:購入は躊躇せざるを得ない
ではEIDOのチャートを確認してみましょう。
EIDOは長年下降トレンド
下の図をご覧ください。EIDOは2010年5月5日にスタートしていますが、2013年以降は下降トレンドにあるのが明らかです。EIDOの価格は2011年初めごろはおよそ$26で、2020年末には$23に下落していますから、10%以上の下落です。正直EIDOは期待外れです。
どうしてこんなことに?
EDIOの低迷はルピア安が主な要因
EIDOはドルベースです。ドル・インドネシアルピアの相場の影響を考えてみましょう。
2011年から2020年末までに確かにドル高・ルピア安が進行しています。2011年初めごろは1ドル≒9000ルピア、2020年末頃は1ドル≒14000ルピアです。ルピアの価値は35%ほど下落しています。
通貨安が進行するのは成長途上でインフレ率が高い新興国にはありがちなことです。こうした為替相場の影響は、新興国投資の難しさの一つの要因と言えるでしょう。
しかしルピア安を計算に入れても、ジャカルタ総合指数は10%上昇している筈です。であるのにEIDOは10%下落です。このずれの原因はEIDOが目標とする指数にありそうです。
EIDOが連動するのはインドネシア総合指数ではない
実際のところ、EIDOが連動するのは ジャカルタ総合指数ではありません。EIDOが連動するのはMSCIインドネシア・インベスタブル・マーケット・インデックスです。この指数の詳細は確認していませんが、この指数とジャカルタ総合指数のある程度ずれがあると思われます。
インドネシア株に投資するなら個別銘柄だが・・・
ETFがだめなら個別の銘柄に投資するしかないですね?
もちろんそういう選択肢もあります。
でも、わたしは基本的に個別銘柄で投資はしないことにしてます。
ETFでインドネシア株に投資するのは、ためらわざるを得ない状況です。このような状況でも、個別銘柄に投資して利益をあげることは可能です。しかし、わたしは個別銘柄への投資はあきらめました。理由は3つです。
- 個別銘柄への投資はそもそも難しい
- インドネシア企業の情報を集めるのが困難
- インドネシア株は取引き手数料が高い
個別銘柄への投資はそもそも難しい
わたしがETFを利用しているのは、個別銘柄への投資は銘柄選定が難しいからです。ETFで利益が期待しがたいからと言って個別銘柄に手を出すのは本末転倒です。
インドネシア企業の情報を集めるのが困難
個別の銘柄から投資対象を選定するには、企業の情報を収集する必要があります。しかしインドネシア企業に関する情報を日本で手に入れるのは困難です。
インドネシア株は取引き手数料が高い
インドネシア株の取引き手数料はどうしても高くなりがちです。わたしがメインで使っているSBI証券でも、取引き手数料は1%(消費税別)です。購入時にも売却時にも手数料がかかるため、2%の負担になります。これは無視できない金額です。
インドネシア株はだめでも、インドネシアの経済成長の恩恵は受ける
結局、インドネシアに投資できないじゃないですか!
いやいや。インドネシアの経済成長で儲かるのはインドネシア企業だけじゃないですよ。
???
インドネシアで儲けている企業に投資すれば、インドネシアの経済成長の恩恵を受けることができます。
インドネシアの経済成長率は依然として高い水準を維持しています。しかし2011年~2020年を見ると、株価の上昇率がGDP成長率を下回ります。加えてルピア安の進行があるため利益を出しずらい状況です。この点は「たぱぞう」さんも指摘しています(#1)。
しかし、インドネシア経済にはまだまだ将来性も感じます。ここで考えたいのは、インドネシアで儲けているのはインドネシア企業だけではない点です。であるならばインドネシア企業ではなく、インドネシアに進出している米国企業に投資することで、インドネシアの経済成長の恩恵を受けることは可能なはずです。
The American Indonesian Chamber of Commerce(AICC)のサイトを見てみると米国企業は、電力、電気通信、鉱業、石油とガス、建設、金融サービス、工業用および農薬、食品、健康と環境製品、消費財といった分野にビジネスチャンスを見出しているようです(#2)。
インドネシアに進出している米企業名についてはAICCのサイトでも見ることができます。たとえば、 Procter & Gamble、Phillip Morris、 Walmart、Coca Cola といった企業です。個別の銘柄への投資を難しいと感じるならば、 わたしのように、アメリカの生活必需品セクターETF(XLP) を介してこれらの企業に投資することもできます。
新興国投資には債券投資もある
投資には株式の他にも債券もありますよね。
インドネシア国債はどうです?
それについては次の記事で分析しましょう。
ここまで、インドネシア株への投資を考えてきましたが新興国投資には債券投資もあります。次はインドネシア国債について分析したいと思います。
この記事はあくまでも個人的見解を述べています。投資はあくまでも自己責任でお願いします。
最後までお疲れさまでした。
もしよければ次は、インドネシア④国債編へどうぞ。
前の記事を未読の方は、インドネシア①基本情報編や、
インドネシア②メリット・デメリット編もいかがですか?
参考資料
#1 本音が飛び出す!つみたてNISA座談会、 第6回 投資商品の選び方(金融庁)
#2 https://aiccusa.org/about-aicc/aicc-history
#3 サクッとわかるビジネス教養 東南アジア(監修 助川成也、新星出版社)
コメント