外からの騒音を遮りたい、自分の家から漏れる音を減らしたい。そんな時に考えるのが防音です。
防音と言っても、吸音、遮音、防振、制振などがあります。吸音、遮音の違いがわからないと、わたしの様にお金を無駄にしてしまいます。
吸音、遮音、防振、制振のどれが必要かわからない方のために、それぞれの基本的な違いについてまとめました。わたしの失敗談と一緒にどうぞ。
吸音と遮音の違いを知らず、お金を無駄にした実体験
防音には吸音、遮音、防振、制振などがあります。わたしは今回、吸音と遮音の違いを知らずに無駄な出費をしてしまいました。
わたしは防犯カメラの記録装置が出す高い金属音に悩んでいました。吸音フェルトボードで記録装置を包んでも全く効果がありません。ところが防音カーテンで包んだところ、高音の金属音がほとんどなくなりました。
吸音は、音を反響させないことが目的で、吸音素材の場合には音の大部分は透過します。そもそも吸音フェルトボードはわたしの目的に合致していませんでした。
遮音は、音を透過させないことを目的としています。遮音は、わたしの目的に合致しています。防音カーテンは中高音での遮音性能に優れているので、とくに金属音の低減にはうってつけでした。
わたしが、吸音と遮音を理解していれば、無駄な出費を回避できたはずです。みなさんは、わたしと同じ失敗をしないようにしましょう。
発端は防犯カメラ
わたしの家には防犯カメラを設置しており、映像は書斎のハードディスクレコーダーに記録しています。このレコーダーが諸悪の根源です。
うっとうしい金属音
レコーダーが、とにかく五月蠅いのです。つねに「キィィンキィィィンキィィン」、「ィィィイイイイイイィィィィ」という金属音的な音が2つと、「ウーー」という低い音の3種類の音が混じっています。
とくに「キィィン」と「イイイ」の強弱の波が鬱陶しくて、仕事に集中できません。何とか音を小さくしたいと思いました。
フェルトボードで失敗
まず、厚さ5mmほどの吸音フェルトボードで簡単な箱を作ってみました。しかし、全く効果が感じられませんでした。
後で知ったのですが、吸音の素材は、音を反響しない素材です。音をよく吸収し、よく透過させます。音を遮る遮音効果がないのは当然です。
防音の基本を知っていればこのような失敗をすることはありません。
それでは防音・遮音・防振(と制振)の基本について説明しましょう。
防音には吸音、遮音、防振、免振がある
防音の基本は吸音、遮音、防振、制振です。吸音と遮音は空気中を伝わる音への対策です。防振・制振は建物に伝わる振動への対策になります。
吸音と遮音
吸音と遮音は空気中を伝わる音波への対策です。では二つにはどのような違いがあるのでしょうか。
吸音と遮音の違いを理解するには、防音材での音の反射、吸収、透過を意識しましょう。
音の反射、吸収、透過
防音材に当たった音は、一部が反射され、一部は吸収されます。吸収された音(振動エネルギー)の一部は熱エネルギーに変換されます。反射と熱エネルギーへの変換の分だけ透過する音(のエネルギー)は小さくなります。
吸音は反射を抑える
吸音の目的は、音の反射(反響)を小さくすることです。ですから吸音材は音の大部分を吸収するのが特徴です。
吸音材の代表的なものは、防音カーテンのワッフル状の凸凹した布地、グラスウール、ウレタンスポンジ、有孔ボードなどです。
吸音材は音を透過させる
吸収された音のエネルギーは、一部が熱エネルギーに変換されます。しかし、音のエネルギーの大半は透過して反対側に出ていきます。吸音材は単独では役に立ちません。
吸音材の場合、吸収された音エネルギーののほとんどは、そのまま透過します。
フェルトボードで包んでも音は素通りなんですね。
じゃあ、吸音材って意味ないんじゃ?
その通り。
吸音材は単独ではあまり意味がないです。
単独では?
吸音材は背後空気層とのセットで機能を発揮するんです。
吸音材は背後層と組み合わせる
吸音層は背後の空気層やその他の材質と組み合わせます。すると、ヘルムホルツ共鳴器の原理で、共鳴する周波数帯域の音を減衰させることができます。
つまり吸音層は背後の層とセットで、はじめて効果を発揮します。
繰り返しになりますが、吸音層単独では音を遮る効果はありません。吸音フェルトボードだけでできた箱では、騒音が遮れなかったのは当然です。
吸音が必要な例
スタジオで楽器の音が反響して耳が痛くなる。会議室で声が反響してが聞き取りずらい。といった状況では吸音が必要です。
ご家庭なら、オーディオルームやピアノ部屋などが当てはまります。
音が反響すると困る場所では、吸音が重要です。
遮音は音を透過させない
遮音は音を透過させないことを言います。そのために音の大部分を反射します。
反射によって、遮音素材が吸収する音のエネルギーは小さくなります。吸収された音エネルギーの一部は熱エネルギーとなり、透過するエネルギーはさらに小さくなります。
鉄板、コンクリート、石膏ボードなど遮音素材の代表格です。防音カーテンの重い布地、樹脂コーティングなども遮音素材です。
表面が平坦なほど反射しやすい
光が平滑な面でよく反射するように、音も平らな面でよく反射します。表面が凸凹なほうが効果が高くなる吸音とは真逆で、表面が平滑であるほど遮音は効果が高まります。
重いほど遮音効果は高い
重い(つまり面密度が高い)素材ほど高い遮音性能をもちます。防音カーテンが重いのもそのためです。
遮音はコンクリートをイメージすると分かりやすいです。
例えばトンネルとか、高架下の通路です。
とても声が反響しますね
音を殆どを反射するからです。
その分、音はほとんど透過しないわけですね。
遮音が必要な例
自宅のピアノやオーディオの音を外に漏らしたくない。外の騒音を中に入れたくない。といった場合に選択するべきなのは遮音です。
わたしの様に、自宅の「録画装置の音が気になる」とか、「プリンターがうるさい」というのも遮音が必要です。
遮音を組み合わせる
単独の器具では遮音が不十分なこともよくあります。そのような場合には遮音対策を複数組み合わせることで遮音効果を高められます。
例えば窓の遮音なら、二重サッシと防音レースカーテン、防音カーテン、防音ボードを組み合わせることで効果を高めることができます。
手軽な順に並べると、次のようになります。
- 防音カーテン・防音レースカーテン
- 防音ボード
- 二重サッシ
防音カーテン
防音カーテンのコーズは通常のカーテンレールにも基本的に取り付け可能です。
防音ボード
費用はそれなりですが、工事は不要なのがメリットです。
二重サッシ
二重サッシ・二重窓へのリフォーム工事は1ヶ所あたり5万~15万円はみておきましょう。
防振と制振
防振と制振は振動を抑える方法です。上階や工事現場で発生した振動が建物へ伝わると、壁や床・天井などが振動します。振動するとビリビリ音などが生じます。さらに振動には、離れた建物・部屋まで伝わりやすいという厄介な特徴があります。
防振とは
防振は、文字通り振動を防ぎます。振動が発生する場所で、衝撃を吸収します。それによって振動が建物に伝達しないようにします。
具体的には床に使用するゴムマットやフェルトなどを使った振動対策になります。
防振の必要な例
足音を階下に伝えない。振動を抑えたい。ステレオの低音を階下に伝えない。などの場合にはご家庭で防振が必要です。
制振とは
制振も振動を抑えるのですが、機械などの揺れを制御し、その振動を熱エネルギーに変換して減衰させます。発生源から建物へ振動が伝達するのを防ぐ防振とはことなり、発生源で生じる振動そのものを減らす方法です。
制振の例
本格的な制振は、ダンパーをつかった制振になります。油圧やゴムを使った制振ダンパーは地震対策にも利用されています。
そんな大がかりな対策は家庭では無理ですよね?
そうです。
家庭での制振には、ゴムシート、鉛シートを使います。
どう使うんです?
エアコンや冷蔵庫でビリビリ音がする部分にゴムシート、鉛シートなどを取り付けて、共振によるビリビリ音を防ぎます。
伝わってくる振動は遮断できない
防振やダンパーを使った制振は、基本的に振動が発生する場所で行う対策です。自分が振動を発生させない対策とも言えます。工事現場などで発生した振動が自宅に伝わるのを防ぐことはできません。
しかし、制振は全く無力というわけではありません。
窓や壁が共振して大きな音を出すことは防げるかもしれません。
まとめ
防音には吸音、遮音、防振(と制振)があります。吸音、遮音、防振はそれぞれ目的が全く異なります。自分に必要な対策がどれなのかしっかり把握してから、適切な防音対策をとりましょう。
- 防音には吸音、遮音、防振と制振がある。
- 吸音は反響を抑える。スタジオや会議室、オーディオルームなどに適用。
- 遮音は音を透過させない。音の出入りを防ぐ。
- 防振は衝撃を吸収して、振動を建物に伝達させない。
- 制振は振動の発生源で、振動自体を減らす。
- 建物を伝わってくる振動そのものを防ぐことはできない。
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