私は基本的にETFで資産運用をしています。しかし数少ない例外として、銀行株(三井住友FG、三菱UFJ・FG)は個別銘柄を保有しています。高い配当利回りが魅力だからです。
2022年になり金利上昇局面となったため、銀行株の上昇には期待していました。政策金利が高いほうが、銀行は利ザヤで利益をあげやすいからです。しかし実際には2022年3月下旬に高値を付けてからは伸び悩み、むしろ下落しています。どうしてでしょうか?
日経新聞の記事をもとに、銀行株にとってのポジティブ要因とネガティブ要因を自分なりに整理してみました。
UFJ株の推移
三菱UFJフィナンシャルグループの2022年の株価を見てみましょう。2022年3月下旬に800円の大台を超えましたが、その後は徐々に下落しています。
わたしの浅ーい知識では、金利上昇は銀行の業績にはプラスに作用する筈です。そして、2022年は米国で政策金利の上昇が確実視されています。それにもかかわらず三菱UFJの株価は下落しはじめています。なにゆえに・・・?
ポジティブ要因
そもそも銀行株にとって重要なポジティブ要因とは何でしょうか?
それは、やはり金利上昇です。
金利上昇で利ザヤが改善
金利の上昇は、基本的には銀行にとってポジティブな要因と言えます。政策が金利上昇すれば貸出金利も上昇します。そのため、利ざやの改善が進み、利益の増加が見込まれます。
実際に日本の大手銀行5社の本業での儲けを示す業務純益は、前期比で2022年3月期は5%増加しています。(日経新聞 2022年5月17日)
金利上昇が続く
米国の政策金利は、世界の金利動向に極めて大きい影響力を持っています。その米国の政策金利は今後も上昇が見込まれます。
実際、5月の記者会見で、パウエルFRB議長は6月と7月のFOMC会合での0.5%の利上げを示唆しています。さらに、クリーブランド連銀のメスター総裁は0.75%の利上げも選択肢になるとの考えを示しています。(日経新聞 2022年5月18日)
ネガティブ要因
2022年5月時点で、銀行株にとってネガティブな要因も確認しましょう。主な要因は以下の3つです。
- 外債の含み損
- ロシア関連費用
- 景気後退懸念
外債の含み損
金利の上昇は、銀行の本業には追い風です。しかし実際には日本の銀行にとってはネガティブな要素となっています。理由は外国債券(外債)です。
日本の銀行は巨額の資金を外債で運用しています。日本国債よりも外債のほうが金利が高いからです。そして外債の金利は、米国の政策金利の影響を強く受けます。そして金利上昇時に債券価格は下落します。
実際に、米国の10年債利回りは2022年初の1.5%から2022年3月下旬には2.5%まで上昇しました。そのため外債価格は下落しています。その結果、日本の銀行は相当な含み損を抱えているのです。
具体的には、三菱UFJが保有する外債の含み損は3月下旬には約8500億円規模に増大しています。そして、3月末で5大銀行グループの抱える含み損は総額1兆7500億円程度になっているのです。(日経新聞 2022年5月17日)
ロシア関連費用
ロシア企業への貸出金などによる対ロシアの与信残高も不安要素です。3メガバンクのロシア国内の与信残高は一兆円規模になります。債務の返済に疑義が強まることから、3メガバンクは2022年3月期決算でロシア関連の引当金を約3000億円計上しています。しかし、ウクライナ危機が長引けばさらに損失を計上せざるを得ない展開もあり得ます。(日経新聞 2022年5月17日、5月22日)
ロシア関連費用が膨らんでいるのは、国外の金融機関も同じです。とくにオーストリアのファイファイゼン、イタリアのウニクレディト、米国のシティグループの与信残高は目立って大きな金額となっています。ウクライナ危機の収束のめどが立たないため、銀行経営にとっては厳しい局面が続きます。(日経新聞 2022年5月22日)
社名 | 与信残高 |
ライファイゼン (オーストリア) | 225億ドル |
ウニクレディト (イタリア) | 72億ドル |
シティグループ (米国) | 79億ドル |
みずほFG | 29億ドル |
三井住友FG | 29億ドル |
三菱UFJ | 24億ドル |
景気後退への懸念
さらに、米国での景気後退への懸念が高まっています。理由はFRBによる急速な金利引き上げです。FRBが金利引き上げを急ぐのはインフレを抑制するためです。
しかし急速な利上げは景気を過度に冷やしてしまうリスクがあります。そのため、米経済は2023年以降に景気後退に陥るとの予測も出始めています。(日経新聞 2022年5月22日)
そして景気後退懸念のため、ダウ工業株30種平均は8週連続で下落しました。これほどの下落は実に90年ぶりのことです。
株価下落がとくに著しいのはIT銘柄です。とはいえ、資源関連株など一部の銘柄を除いて軒並み株価は下落しています。
銀行株も例外ではありません。不景気で金を貸す相手がいなくなれば、銀行は儲けることが出来ないからです。
当面はネガティブ要因が解消しそうにない
どうやら、今の時点では銀行株には不安材料が多そうです。しかも、当面は銀行株のネガティブ要因は解消しそうもないです。
景気後退懸念の背景には過度のインフレがありますが、そもそもインフレを解消することは容易ではないでしょう。
インフレの要因は単純ではありません。あえて単純化しても、インフレの要因として通貨価値の希釈と、物不足があります。
通貨価値の希釈は、量的緩和などによる通貨価値が減じることで生じる値上がりです。つまり品物の供給量は確保されています。
物不足とは、文字通り品物の供給量が不足したことによる値上がりです。
とくに私が懸念しているのは物不足です。これは、そう簡単に解決しないと思われます。なぜなら物不足の主な原因が、以下の2つだからです。
- 新型コロナウィルス感染症の流行
- ウクライナ危機
新型コロナウィルス感染症の流行
新型コロナウィルス感染症の流行では、2020年から中国や東南アジアなどでの工場の操業停止で生産力が低下したため物不足が生じています。例えば半導体不足や、部品の供給不足で、自動車だけでなく給湯器やプリンターなど様々な工業製品が品薄となりました。
この供給不足については、さらに上海のロックダウンなどによる海上輸送の停滞が拍車をかけています。
ウクライナ危機
ウクライナ危機によって、ロシアやウクライナの産品の供給不足が加わりました。
石油・天然ガスなどの化石燃料、アルミなどの金属、ニッケルなどのレアメタル、ヘリウム、クリプトン、ネオンなどの希少ガス、小麦やトウモロコシなどの穀物、農作物を育てるための肥料、種苗なども多種多様な産品が不足しています。
問題の解決には時間がかかる
新型コロナウィルス感染症については、徐々に各国がウィズコロナ、アフターコロナを模索し始めて言いますが、中国のようにゼロコロナ政策を維持する国もあります。世界全体で新型コロナウィルス感染症の影響がなくなるまでには、まだ時間が必要でしょう。
さらに、ウクライナ危機については、収束の糸口も全く見えていない状況です。
こうして世界的な物不足が続く以上、インフレは避けられません。景気の先行きの不透明感は強く、銀行株もしばらくは不安定な状態が続くと思います。
この記事での予測はあくまで個人的な投資方針をお話ししただけです。あくまでも投資は自己責任でお願いします。
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