概要
2022年12月になりTLT価格は$100台を回復しています。投資マネーが米国債に流入し始めたからです。背景には、米国金利の上昇に伴う、景気減速懸念がります。歴史的インフレに対応するため、米金利は当面は高水準を維持することが予想されます。米連邦準備理事会は、人手不足によるインフレ圧力を警戒しています。わたしは、今後も米国の労働市場に注目しようと思います。
TLT価格が100ドル台を回復
わたしは、米国株のETFを中心にした投資を行っています。どちらかというと債券重視で、債券の比率は40-50%を目安にしています。現在は債権の大半をTLT(米国債20年超ETF)の形で保有しています。TLTは2022年初から急落しており、わたし自身もかなりの含み損を抱えています。しかし2022年12月に入りようやく明るい兆しが見えてきました。
というのもTLTの価格が大きな区切りである$100を超える水準まで戻してきたからです。下のチャートのようにTLT価格は、足元では$107台をつけています。
背景にあるのは何でしょうか?例によって日経新聞の記事を見てみましょう。
米国債へ資金が流入
米市場では国債への資金流入が始まっています。「投資マネーがリスク回避の姿勢を強めている」(#1)のです。そのため「米長期金利の指標となる10年物国債利回りは前日比0.02%低い(価格は高い)3.48%」となっています。
なぜなら「利上げによる消費の冷え込みなどで、企業業績に不況の芽が表れ始めている。」(#1)からです。
では、米国の政策金利はどうなっているのでしょうか?
米金利は利上げ幅縮小も、到達金利は上昇
2022年12月の利上げ幅は0.5%に縮小
米連邦準備理事会(FRB)は「14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で前回まで続けた0.75%の利上げ幅を0.5%に縮小」(#2)しました。「歴史的なインフレもピーク超えが視野に入った」(#2)ためです。
到達金利は5.1%に引き上げ
しかし一方で、米国の「到達金利は前回の4.6%から5.1%に引き上げられ」(#2)ました。
つまり、インフレのピーク越えが近いとはいえ、インフレ圧力自体はFRBの想定していたよりも強いということでしょう。
金利のピークは来年5月?
では、到達金利にはいつ頃なるのでしょうか?日経新聞によると「年明け以降に0.25%ずつ利上げしても、5.1%に達して利上げが打ち止めになるのは来年5月」(#3)になります。
では利下げはいつ頃なのでしょうか?
利下げは24年以降?
FRB議長のパウエル氏は、「23年度中の利下げ転換について『検討していない』と述べた」(#2)そうです。
実際に、利下げがいつになるのか不明ですが、23年度中に大幅な利下げが実施される可能性は高くないでしょう。
金利について専門家の意見も割れている
とはいえ、専門家の間でも、今後の金利については意見が分かれています。日経新聞によると「24年末の政策金利見通しは5.5%を超える予想から、3%前半への大幅な利下げに転じる予測まで大きなばらつきがでた」(#3)そうです。
背景に人手不足
FRBが「政策金利を当面高い水準で維持する方針を示した」(#3)のはなぜでしょうか?その重要な背景としては、米国での人手不足があります。
米国では「賃上げが続いているにもかかわらず、労働参加率は変動していない」(#3)のです。米国では、コロナ禍をきっかけに早期退職を選択した人が多く、労働市場には戻ってきていないからです。
そのため、「人手不足」→「人材の奪い合いで賃上げ圧力」→「サービス価格の上昇圧力」という形でインフレ圧力が生じています。
そして人手不足が構造的に解消されない限り、人手不足によるインフレ圧力が無くなりません。そして「インフレが高止まりする限り、引き締めを継続せざるを得ない」(#3)のです。
労働市場に注目
こうした事情を考えると、今後の金利動向を判断する際、労働市場には注目せざるを得ません。労働参加率、失業率、解雇者数などの指標を今後も注視したいと思います。
この記事は、わたしの個人的な投資方針を解説したものです。あくまでも投資は自己責任でお願いします。
<参考文献>
#1 「米市場、リスク回避つよまる」(日経新聞 2022/12/16 朝刊)
#2「米利上げ幅0.5%に縮小」(日経新聞 2022/12/16 朝刊)
#3 「米、インフレ圧力根強く」(日経新聞 2022/12/16 朝刊)
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