FRBが金利を引き上げても、長期金利に低下圧力?その理由と米長期金利の行方

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概要

2022年になってから、米政策金利は急激に上昇しています。米国債10年物利回りは、6月14日には3.5%に迫った場面もありましたが、その後2022年6月後半にかけてやや下落し、3.0%近くになっています。

6月15日のFOMCで0.75%も政策金利が上がったのにどうして?と思っていましたが、日本経済新聞を読んで答えが分かった気がします。どうやら、「金利上昇による景気不安」などいくつかの原因があるようです。今回も日本経済新聞の記事をベースにまとめました。

2022年6月の米長期金利

2022年6月の米国債10年物利回りを見てみましょう。

6月15日のFOMCまでは急激に利回りが上昇し、3.5%に迫る勢いでした。しかしFOMC後は3.0%近くまで急激に低下しています。

出典:https://jp.tradingview.com/symbols/TVC-US10Y/

長期金利低下の原因

米長期金利がFOMC後に低下した原因には以下のようなものがあります。

  • 6月に1.0%利上げの懸念
  • 景気不安で国債を買う
  • 利下げ転換を意識

それぞれについて説明します。

6月に1.0%利上げの懸念

6月のFOMC前には、1.0%の利上げも市場では懸念していました(#1)。そのため米国の長期金利には1%利上げがある程度織り込まれた状態になっていたと思われます。

つまり金利が上がりすぎていたわけです。そして、実際の利上げが0.75%であったことを受けて、上がりすぎていた金利が低下したと考えます。

しかし、それだけが理由ではないようです。

景気不安で国債を買う

米国の長期金利がやや低下したもう一つの理由は、景気後退への懸念です。つまり、「政策金利が上がりすぎて、景気を過度に冷やしてしまう」リスクが高まっているのです。

景気不安があると「安全資産」である国債を買う動きが出てきます。すると国債価格は上昇し、金利は低下します。つまり景気不安は2022年6月のFOMC後に長期金利が低下した一因と思われます。

ここでは、「景気不安が生じる背景」や「景気不安が表面化した事例」に関しての3つの重要ポイントを紹介しておきます。

景気不安に関する3つのポイント

景気不安に関連した重要なポイントを3つ挙げておきます。

  • 利上げで経済成長率は下方修正
  • 景気より物価安定を優先
  • 銅、原油、半導体株が下落

それぞれについて説明します。

利上げで経済成長率は下方修正

まず米国の政策金利の動向を確認してみましょう。

2022年6月時点では、遅くとも2022年11月には政策金利が3%を超えるシナリオが濃厚です。そして2023年末には3.8%まで引きあがると予想されています(#2)。これはかなり急速な利上げとなります。

そのため、景気失速のリスクは高まっていると言えます。

実際に、FOMC参加者は23年10月~12月期の実質経済成長率の見通しを2.2%から1.7%に下方修正しています(#2)。

パウエル議長は、景気より物価安定を優先

FRBのパウエル議長は米議会証言において、「我々がインフレと戦う姿勢は無条件」と述べました。つまり、景気より物価安定を優先する姿勢を示しました(#3)。

パウエル議長がこれほどまでに物価安定化を重視する理由は分かりません。

しかし、2022年秋には米国で中間選挙もあります。そして物価高騰のため各国政府の支持率は低下傾向です。物価安定への政権からの要求もかなり強い可能性があります。

いずれにせよ、パウエル議長の姿勢には景気不安をもたらす側面があると思います。

そして実際に景気後退を念頭に置いた変化がみられるようになりました。

銅、原油、半導体株が下落

景気後退リスクへの警戒感は、すでに銅、原油、半導体関連株の下落として現れてます(#4)。

例えば、先物3カ月物の価格は、2022年3月には過去最高となる1トン10800ドルを付けていましたが(#5)、6月22日の終値は1トン8773ドルまで下落(#4)して1年3か月ぶりの安値をつけています。住友商事グローバルリサーチの本間隆行氏は「銅相場は景気後退を織り込んでいる」とみています(#4)。

また、半導体関連株の下落も進んでいます。フィラデルフィア半導体株指数、韓国総合指数、台湾の加権指数は、いずれも2022年5月末比で10~15%も下落しています(#4)。

また、6月17日のニューヨーク原油市場では、原油の先物価格が一時、1バレル=108ドル台まで下落し、6月24日には103ドル台という場面すらありました。

将来的な利下げもすでに意識

投資家は将来的な金利引き下げもすでに意識し始めています(#6)。なぜなら投資家はFRBの見解よりも早い利下げを想定しているからです。

繰り返しになりますが、FRBは2023年末に3.8%まで利上げし、24年末は3.4%と小幅な利下げの方針です(#1)。

一方、シカゴ・マーカンタイル取引所の「フェドウオッチ」によると政策金利は23年前半に3.5~3.75%に高まるとの予想が多く。そして23年後半には3.25~3.5%へと下がると予想されています(#6)。

つまりFRBの予定より1年以上も早い利下げを予想しているということです。

つまり「過度の景気後退によって金利を引き下げざるを得なくなる」という予想なのだと思います。こうした利下げ予測も2022年6月15日以降のの金利低下に影響していると思われます。

とはいえ、利上げは当面続く

いくら国債を買う動きが強まっていると言っても、金利低下圧力はまだ強くありません。2022年6月15日以降の金利低下は、あくまでも一過性の調整だと考えています。

それどころか、2022年秋以降も高インフレに改善の兆しが見えなければ、1回で1.0%の大幅利上げが議論されるかもしれません。そうなると長期金利の上昇圧力も強まります(#1)。

当面は米国政策金利の利上げが見込まれますから、米長期金利も上昇基調と考えておきたいと思います。

それでは、米国長期金利はどの程度まで上昇するのでしょうか?

米長期金利の到達点は?

FRBは米政策金利の到達点を3.8%程度に設定しています。3.8%と言う到達点を考えると、米長期金利は4%近辺が壁となって上昇の勢いが鈍ることも考えられます(#1)。

わたしは、米国債10年物利回り4%に近づくようなら米国債への資金移動をさらに積極的に行うつもりです。

この記事は、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資はあくまでも自己責任でお願いします。

<参考文献>

#1 「米市場、景気軟着陸に疑念」 日本経済新聞 2022年6月17日
#2 「米金利 秋にも3%超え」 日本経済新聞 2022年6月17日
#3 「欧米金利、景気不安で低下」 日本経済新聞 2022年6月25日
#4 「景気後退リスク 市場の警戒強く」 日本経済新聞 2022年6月24日
#5 「銅高騰、5円玉の額面迫る」 日本経済新聞 2022年5月22日
#6 「欧米金利、景気不安で低下」 日本経済新聞 2022年6月25日

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